大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

アルファとベータ

 

クロの好みは外見的には前髪があるミディアムストレート、中身はお姉さん系ということが分かった。

これは、その続きの会話である。

 

 

「俺は、ベータなんだよね」

とクロが言った。

 

「一般的にはベータじゃなくてアルファの男が求められてるんだけど、俺は少数派だね。」

聞きなれない単語だったので何度か聞き直したのだが、アルファ、ベータともに英語スペイン語共通で使われる言葉らしい。

 

説明してくれたのでざっくりまとめると、

アルファ=支配する側、権力を持つ存在、頼りになる、マッチョ(なぜここで身体的特徴が出てきたのかは謎)

ベータ=アルファと違って男らしい!というよりは、守られたい、頼りたい側

ということらしい。

ステレオタイプの男性像がアルファで、女性像がベータといったところだろうか。

 

「前の彼女は周りにも羨ましがられるくらいの美人で性格も良くて、本当に素敵な人だった。でも、彼女ベータだったんだよね。だから、彼女の求めるものが俺にはあげられなかったんだ。そして、その時に気づいたんだ。俺は、頼られるよりも頼りたい側なんだって。」

まだ出会って間もないが、これまでに垣間見えた彼の性質から十分に納得できる話だった。

 

確かに、いまだに男性に頼りたい、と思っている女性は多いだろう。

結婚して旦那さんの収入で暮らしたい、という考えもその一つだと言えそうだ。

 

私はどっちだろうな…と考えてみた。

自分の面倒を見てくれる存在がいるのは多いにありがたいが、甘え下手なのは自負している。

女性が頼りになる男性を求める一方で、頼られたい男性が多いのも事実だろう。

彼の言葉を借りるとするならば、『ベータの女性』の需要が大きいということだ。

 

話を聞きながら、私は勝手に救われた気分になった。

思い返してみると、いわゆる『ベータ』でない自分がコンプレックスだったかもしれない。

一般的な可愛らしい女性として男性に尽くしたり甘えたりするのが不得意で、恋愛でもすれ違うことが多かった。

私と離れた後に男性がいわゆる『ベータ』な女性を選ぶと、自分自身を否定されたようでひどく落ち込んだものだ。

女性たるもの、ベータであれ。

そんなこと誰にも言われたことがなかったけれど、自らを苦しめる呪いを自分にかけていたのかもしれない。

固く封印されていたお札が、目の前のロキの言葉で剥がれたような気がした。

 

私が考えていることに気づいたのか、

「君はアルファだよ。ぜったい」

と言われた。

まだ自分では判断できないし、どちらの要素も持っているかもしれない。

どちらにせよ、これまで居場所がないと思って狭い部屋に閉じこもっていた自分が、この瞬間に肯定されたみたいで嬉しかった。

甘えられない女性でもいいし、そんな女性を求める人もいる。

だって世の中にはいろんな人がいる。

そんな当たり前のことも、いざ目の前にするまでなかなか信じられなかった。

 

地球の反対側まで出てきた甲斐があるなあ、なんてぼうっと思った。

 

 

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

で会話をしています。