大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

異変

 

いつからだったのか正確には思い出せない。

 

でも、それは私の目には明らかだった。

あんなに甘えてきたクロが突然じゃれてこなくなって、意図的な距離を感じる。

私からハグをすると応えてはくれるけれど、どこかこわばった表情に見える。

 

気持ちを確かめ合ってから1週間くらいしか経っていないのに。

こんなに一瞬で私は冷められてしまったのだろうか。

 

 

結局、不安なんてものはいつもすぐそこに隠れている。

恋に落ちて、私の好きな人が私を好きで。

うっとりした顔で私を見つめて愛を囁いてくれる。

そんな毎日がずっと続くと思っていたのに。

 

私の心の黒いものは、些細なことの積み重ねで、あっという間に大きくなってしまった。

まだそんなに日も経っていないのに。

 

初めて異変に気づいた時に、彼に理由を問いてみたことがある。

「重いと思われたくなくて。それに、たまには君から甘えてくれたっていいんだよ。」

と言われ、それもそうかとその時は納得した。

それ以来、私から彼にくっつきに行くことも増えた。

 

しかし今は、ほぼ私からのアクションになっているような気がする。

 

生理前で尚更情緒が不安定な私の頭の中に次々と浮かぶ言葉。

「もう手に入ったと思って、余裕が出たのかも」

「飽きられたのでは」

「私への興味がなくなったのかな」

「私への気持ちは気の迷いだったのかも」

どれも否定的なものばかりだ。

 

これまでの私の恋愛は、恋愛と呼べるようなものが少ない。

いつも見栄を張ったり自分をよく見せようとするあまり空回り、相手と自分を傷つけてばかりだったと思う。

そんな経験しかないものだから、恋愛においてまるで自信がないのだ。

両思いだと気づいた瞬間の幸福感も、私の自信のなさの前では崩れ去るのは一瞬だ。

それほどまでに、私はいまだに過去に囚われている。

 

そしてきっと、こんな風に考えていると笑顔も減り、さらに魅力的でなくなってしまうのでは

と自分を責める悪魔の思考はとどまるところを知らない。

 

一度そんな考えが頭をよぎってからは、全てを悲観的に考えてしまうようになってしまっていた。

 

ある日、クロがTikTokを私に見せてきた。

驚かす系の内容だったのだが、私はホラーが大の苦手だ。

幼少期にトラウマのようなものがあり、意識的に見ないようにしている。

彼にもホラーは好きじゃないと伝えた。

何度か面白半分で見せようとしてきたが、頑なに見ようとしない私をみて

「つまんな〜い」

と言われた時には、なんとも言えない絶望にも似た感情が湧いた。

トラウマのことは伝えていないし、ノリが悪いな〜というくらいの感覚で言ったのだろうが、傷心中の私にとどめを刺すには十分だった。

 

ほんまに好きやったら、相手の嫌がることせんと甘やかすんと違うん。

どっかの恋愛マスターにでも聞いたような話も鵜呑みにしがちな私は、消去法でクロは私を好きではないんだと結論づける。

 

その日はホルモンバランスも情緒も乱れまくっていて、どんな些細なことでも感情が動けば涙が出てしまいそうな気分だった。

話し合おうにもうまく言葉を紡げる自信もない。

せめてもの反抗心で、乱暴に家を飛び出すことしかできなかった。

 

あわよくば心配してくれないかな、なんて淡い期待を抱くも、結局外に出ても私のほうが考えこんでしまっている。

3時間ほど外で過ごして、家に戻ってきた頃にはクロがいなくなっていた。

 

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

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