同居人2
「どういうこと!?」
女の子と私の反応がシンクロする。
クロの悲痛な叫びをまとめるとこうだ。
彼は清潔感に欠けている。
家に対しても不平不満ばかり。
すぐに部屋にこもり大家と電話で話している様子。
とにかく、仲良くやれそうにない。
まだ対面していない私は第三者の目線で面白がっていたが、彼が真剣に家を出ることを検討しているのが分かり笑いは消えた。
私の部屋を予約していた、とも言っていたらしい。
そんな話は一切聞かされていないし、私たち3人とも大家に何も言われていない。
あまりの展開に信じられない、という女子2人に対し、クロは言った。
「俺はもともと人よりも感覚が鋭くて敏感なんだ。人が数時間かけて気づくことに数秒で気づいてしまうくらいにね。俺の全神経が、こいつはやばいやつだって言ってる。一緒に住むということは、俺たちの生活から平穏が奪われるということだよ。安心して、暮らせない。」
次から次へと並べられる否定的な意見。
それが真実かどうかは問題ではない。
「君の部屋のこともなんか言ってたし、君にもどう接するのか不安だよ。」
今のクロにとっては、それが真実なのだ。
これほどまでに否定的な言葉の数々を耳にしては、私も前向きに慣れない。
何だか家に帰るのが怖くなってきた。
一体どんなやばいやつなんだ。
一時的に気を紛らわせるように、熱心に中心地を観光した後、なるべくゆっくりとした足取りで家路に向かった。
新たな同居人とは、ちょうど玄関で出くわした。
クロからのメッセージでとんでもない輩を想像していたので、さして衝撃はなかった。
向こうはジムに向かうところだったらしく、簡単に挨拶をしてその時は別れた。
家の中に入ると、ソファに座ったクロがいかにも不機嫌ですというオーラを放っていた。
携帯と睨めっこしているところを見ると、友人にでも不満をこぼしているのだろう。
「調子はどう?」
差し障りのない質問で話しかけてみたが、
「良くない。」
と今までで一番そっけない返事が返ってきた。
どうやら本当に気に入らないようである。
「話したい?」
吐き出すことで多少楽になるかもと思い聞いてみたが、そんな気分ですらないらしい。
しばらくそっとしておくしかなさそうだ。
結局その日は一日中彼の機嫌がなおることはなかった。
そして、次の日も。
何なら、次の日は輪をかけて機嫌が良くなさそうだった。
イヤホンをつけて周りとの接触を避けているようにも見えた。
いつもなら必ず外出前は声をかけられるのに、それもなかった。
寂しいという感情はもちろんあったが、そんな状態のクロに何もできない自分が悔しかった。
彼の人生に干渉する権利のない今の自分が。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。