大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

同居人2

 

「どういうこと!?」

女の子と私の反応がシンクロする。

 

クロの悲痛な叫びをまとめるとこうだ。

 

彼は清潔感に欠けている。

家に対しても不平不満ばかり。

すぐに部屋にこもり大家と電話で話している様子。

とにかく、仲良くやれそうにない。

 

まだ対面していない私は第三者の目線で面白がっていたが、彼が真剣に家を出ることを検討しているのが分かり笑いは消えた。

 

私の部屋を予約していた、とも言っていたらしい。

そんな話は一切聞かされていないし、私たち3人とも大家に何も言われていない。

 

あまりの展開に信じられない、という女子2人に対し、クロは言った。

「俺はもともと人よりも感覚が鋭くて敏感なんだ。人が数時間かけて気づくことに数秒で気づいてしまうくらいにね。俺の全神経が、こいつはやばいやつだって言ってる。一緒に住むということは、俺たちの生活から平穏が奪われるということだよ。安心して、暮らせない。」

次から次へと並べられる否定的な意見。

それが真実かどうかは問題ではない。

「君の部屋のこともなんか言ってたし、君にもどう接するのか不安だよ。」

今のクロにとっては、それが真実なのだ。

 

これほどまでに否定的な言葉の数々を耳にしては、私も前向きに慣れない。

何だか家に帰るのが怖くなってきた。

一体どんなやばいやつなんだ。

 

一時的に気を紛らわせるように、熱心に中心地を観光した後、なるべくゆっくりとした足取りで家路に向かった。

 

新たな同居人とは、ちょうど玄関で出くわした。

 

クロからのメッセージでとんでもない輩を想像していたので、さして衝撃はなかった。

向こうはジムに向かうところだったらしく、簡単に挨拶をしてその時は別れた。

 

家の中に入ると、ソファに座ったクロがいかにも不機嫌ですというオーラを放っていた。

携帯と睨めっこしているところを見ると、友人にでも不満をこぼしているのだろう。

 

「調子はどう?」

差し障りのない質問で話しかけてみたが、

「良くない。」

と今までで一番そっけない返事が返ってきた。

どうやら本当に気に入らないようである。

 

「話したい?」

吐き出すことで多少楽になるかもと思い聞いてみたが、そんな気分ですらないらしい。

しばらくそっとしておくしかなさそうだ。

 

結局その日は一日中彼の機嫌がなおることはなかった。

 

そして、次の日も。

 

何なら、次の日は輪をかけて機嫌が良くなさそうだった。

イヤホンをつけて周りとの接触を避けているようにも見えた。

 

いつもなら必ず外出前は声をかけられるのに、それもなかった。

寂しいという感情はもちろんあったが、そんな状態のクロに何もできない自分が悔しかった。

 

彼の人生に干渉する権利のない今の自分が。

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

で会話をしています。