大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

祝日

 

次の日、朝のうちにスーパーに行こうと家を出た。

 

スペインも最近は朝晩はだいぶ涼しくなったが、日が当たるとまだ暑い。

日陰を選んで歩いてスーパーまで向かった。

 

「え。閉まってる。何で?」

今日は平日だ。

いつもならもう開いている時間のはずだけれど。

Googleマップの営業時間を確認してみる。

どうやらスペインの祝日だったらしい。

 

なるほど。

もう一つのスーパーなら祝日でも開いているだろうが、私の買いたいものはここでしか買えない商品だ。

明日にしよう。

日本に旅立った元同居人に報告のメッセージを送り、寄り道せず家に帰った。

 

予定が狂ったので、計画を練り直そうとソファに腰掛けていると、クロも起きてきた。

普段なら学校に行っている時間のはずだ。

学校すら行きたくなくなる程嫌なのかな、と思った。

 

「今日、祝日なんやな。知ってた?」

「知ってたよ。」

「あ、もしかして今日学校休みなん?」

「うん」

「あ!だから昨日遅くまでワイン飲んでアニメ見てたんか。学校ないから。」

私が一人納得しているのを横目にクロは軽く頷いた。

 

待てよ。

学校がないならちょうど良い。

クロの大好きなアニメを一日中好きなだけ見ようと誘ってみるか。

少しの間かもしれないけれど、その間は嫌なことを考えずに済むはずだ。

 

企みで口角を上げながら尋ねる。

「じゃあ今日、何するん?」

「一日中勉強する。」

「え、一日中?」

想定外の答えが返って来てしまった。

 

テストが近いとかなのだろうか。

勉強を邪魔するわけにはいかないしな…

 

ぐぬぬ…と一人考え込む私に

「なんで?」

と今度はクロが尋ねる。

「学校ないなら一日中アニメ見れるかと思って。」

少し面食らった顔をしながらも、

「夜になら。」

と答えた。

夜はやっぱり見るんや。

 

しばらくすると彼が家の掃除を始め、暇になった私は付きまとうことにした。

例の同居人はちょうど出て行って、家には二人だけになった。

 

 

拭き掃除が終わり掃き掃除を始めた頃に、ぽつりぽつりとクロが話し始めた。

 

「親のことは前も話したけどさ。それ以外にもあってさ。君に会う前に地元で会った日本人の女の子がいて。俺は完全に友達だと思ってるんだけど。向こうが好意を持ったみたいで。付き合ってくれって言われててさ。もちろん俺にその気はないから断ってるんだけど、話さないといけないし。家族の話もまた色々あってさ。君とのこともそうだけど。考えたいことがいっぱいあるのに、家にあいつがいると思うと、全然リラックスできないんだよ。俺は人より繊細だって話前にしたと思うけど、あれ、ちゃんと専門家に診断されてるんだ。例えば誰かと会話する時に、言葉以外に表情や態度から情報を読み取るよね。その受け取る情報量が人よりも多いんだ。その分感覚が鋭いんだ。だから、それだけ休む時間も人より必要らしいんだ。睡眠時間が長いのもそうだ。それが今は家でもリラックス状態になれないから疲れが溜まって爆発してしまったんだ。この前も2時間しか寝れなかった。」

言葉通り、彼の目の下には大きなクマができていて、やつれて見えた。

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

で会話をしています。