お土産
クロは、どこか買い物に行った時とか私に小さなお土産を買って着てくれる事がある。
菓子パンだったり、ドーナツだったり。
基本的に食べ物。
なぜなら、私が食べることが好きなことを知っているから。
「食べ物があると、君はハッピーだね。」
と私が喜ぶ姿を嬉しそうに見つめるクロの顔を何度も見たことがある。
私に取ってはモノはなんでもよくて、私のことを考えてくれていた事自体が嬉しい。
その日は朝から週一で開催される朝イチに野菜を買いに来ていた。
アボカドが1kg300円もせずに買えるので、すっかり常連になっている。
普段見かけないお店が出ていて、気になって寄ってみた。
アーモンドをまぶしたパイのようなお菓子が並べられている。
じっと見つめていると売り手の女性がこちらに気づき、声をかけてきた。
遠い地域から仕入れたものをここで安く売っているのだと熱心に説明してくれる。
そうだ、クロへのお土産にしよう。
もらってばかりじゃなく、お返ししたいと考えていたところだ。
お土産を渡したクロの反応を想像すると、なんだかワクワクした。
帰る足取りが軽くなるのが分かる。
家に帰ってクロにあげると、予想通り喜んでくれた。
ハグまでもらえたので、私のほうが得したような気すらする。
そしてタイミング良く以前注文していた衣類が届き、クロはすっかりご機嫌だ。
鏡の前でポーズをとり、
「これ、めっちゃいい感じだよね。似合ってるよね。」
と私にも同意を求めてくる。
クロは細身な方だと思うだが、骨格が良いので痩せこけて見えることはない。
さらに本人がオーバーサイズの服を好むこともあって、普段彼のシルエットは衣類に隠されている。
しかし届いたズボンは丈とウエストがばっちりで、脚の長さが際立つデザインだった。
おうおう。羨ましいこって。
知り合いにモデルを薦められたことをあり得ないという素振りで話していたが、私は知り合いの意見に賛成だ。
クロはアジア人の外見を理想としている節があって、私からすると羨ましいパーツも彼にとっては違うこともあるらしい。
私の低い鼻を羨ましいと言い、私からすると面白みのない直毛が美しいと言う。
高い鼻に、癖毛。
私からすると美しいのに。
人間ってないものねだりだなあ。
クロといると世界の多様性と、違うことすらも美しいと思える。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。