大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

道筋

 

クロがリビングでテレビを見ている時、これまでは興味がなくても一緒に見ることが多かった。

少しでも一緒にいたくて。

 

けれど、ここ最近はモヤモヤする感情に落とし前をつけようと。

これまでと違う行動を意識的にとっている。

 

興味のない内容の時や、気が向かない時は自分の部屋に戻る。

さして特別なことでもないのだが、それだけ以前の私が盲目だったということだ。

 

部屋に戻って携帯をいじっていると、しばらくしてクロが部屋にやってきた。

私の様子を見て、構ってくる。

 

「なんや。寂しかったん?」

にやけそうになるのを我慢してそう言うと、

「寂しいってなに。」

と尋ねてくる。

愛しさのあまり顎を撫でながら説明してやると、目を細めながら素直に頷く。

こんな簡単なことで嬉しくなるなんて。

私はまだまだ盲目だ。

 

 

「ずっと見ているYouTuberにコンサルタントをしてもらうことにした。俺の経歴でも日本に行くことができる方法があるのか教えてもらうんだ。もしかすると、気の進まない学校に通わなくて済むかもしれない。」

驚きと、歓喜だった。

クロが、動いた。

いやいや学校に通わないといけないと嘆いていた彼が。

私が言った時は聞かなかったけれど。

周りを説得するためにも、信憑性もプロの方が確実だ。

そこに邪な感情はない。

素直に、物事が前進する兆しが嬉しかった。

 

そのYouTuberはスペイン人で、長年の日本在住経験を活かし、日本に行きたいスペイン人に対してコンサルのようなことをやっているのだという。

知りたいことを全て質問するのだと意気込む彼の目には、希望が見えた。

 

 

あくる日、コンサルを終えたクロと一緒に、とある資料を見た。

それは、コンサルタントの内容をまとめて送られたもので、簡単に言うと日本に滞在する方法が

記されてあった。

複数のオプションと、それぞれにかかる費用の概算や具体的な計画の例など。

私から見ても、実に充実した内容だった。

 

そこには一番のおすすめは結婚だと記載されていた。

「やっぱり結婚が一番簡単だよね。それは分かってるんだ。」

 

読み進めていくと、現実味のある選択肢が出てきた。

それは特定技能ビザというもので、私も存在を知らなかった。

調べてみると2019年に始まったらしいので、かなり新しいものだ。

 

ざっくり説明すると、特定分野の技術力を証明し、日本の会社に就職が決まれば5年間滞在が許可されるというものだ。

また、その年数は更新が可能なため実質永住できる可能性を含んでいる。

 

クロはレストランでキッチンとして働いていた経験があり、外食業分野に該当した。

試験をパスする必要があるが、例題や参考書なども公式が用意している。

全て日本語のため日本語能力が必要となるが、漢字には全てふりがながふられている。

私には、応募者をふるい落とそうとする意思は感じられなかった。

むしろ、かなりの需要があるのだろう。

例題を見る限り内容も特殊なものは少なく、日本語が理解できれば難なく通過できそうだった。

 

これは、かなり可能性が高い。

「日本語の能力を磨けば、合格は難しくない。」

クロにも、しっくりきたようだ。

 

「日本語の勉強に集中して、このビザで日本に行く。」

力強く、そう言った。

 

 

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

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