悲しいアタック
最近クロは、私のことをポケモンと言う。
そして、私が落ち込んだり悲しい顔をするたびに
「悲しいアタックだ!」
と言って私を笑わせる。
そして出かけた帰りに食べ物を買ってきては
「ハッピーになった?」
と聞いてくる。
「君にはハッピーでいてほしい。」
と言う。
悔しくも簡単に一喜一憂する私は、ポケモンだと言われても仕方ない。
「大学を辞めてお金が浮いたから、脱毛を予約したんだ。」
昼ごはんの時に、クロは言った。
彼は体毛が濃いのが気に入らず、今も自分で剃っている。
しかし肌が弱くカミソリ負けをするので、それを鑑みてもエステに行くほうが良いと考えたのだろう。
彼の考えには賛成だ。
実際私も脱毛に通ってから自己処理がかなり楽になった。
それに、肌が荒れてしまうのは誰でも避けたいだろう。
「そのうち、ほくろも取りたいと思っているんだ。それと、鼻も。俺の鼻は骨がしっかりしすぎていて、視界を妨げるし。もうちょっと控えめな鼻がいいんだ。日本での施術を調べたら、スペインに比べてかなり安くてさ。もちろん質も良いだろうから、最高だよ。」
次々と発せられる予想外の言葉に戸惑いを隠せない。
思わず困惑の表情を見せてしまう。
ほくろも鼻も、私には気にならない。
むしろ、素敵だと思う。
しかし、コンプレックスというのは周りの意見が重要なのではない。
本人が納得しなければ、一生付き纏うものだろう。
自分がもっと自信を持つために整形をする、そんな人が増えている。
それに反対するつもりはない。
ただ、正直驚いた。
そこまで真剣に考えていたなんて。
そして、
「正直ちょっと怖い…。」
「なんで当の本人より君が怖がってるんだよ。」
クロの言う通りだ。
なんで私がこんな感情になっているのだろう。
「私は、素敵やと思う。もちろん、自分がどう感じるかやから、止めはせんけど。私はクロのことが好きやから。そのクロがちょっとでも少なくなることが怖いんかもしらん。」
心なしか、クロが難しい顔をしたように思えた。
ここ最近私たちの距離はまた縮まったように思っていたけれど。
私が好意を言語化するたびに、クロは複雑な反応を見せる。
私がクロを好きでいることは、求められていない。
そう肌で感じた。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。