幸せになる夢
クロと話しながら、私は自分がクロに頼ってしまっていたことに気づいた。
私は、誰かに求められたかったのかもしれない。
求められることで、自分の存在意義を見出していたのだ。
だからこそ、相手に縋るようになり、相手の機嫌を伺うばかりになってしまっていたのだ。
そしてその全ての根源は、自分自身を認められていないから。
自分自身を愛せていないから。
自分を愛せなければ、他人を愛する方法も分からない。
クロもそう言っていた。
「クロは、自分の愛し方をもう知ってるん?」
「うん。そして自分自身の満たし方もね。」
それから、クロは彼なりの方法を教えてくれた。
「例えば俺は、夜寝る前に毎日自分が日本に住んでいるところを想像するんだ。つまり、自分の理想を思い描いて幸せな眠りにつくんだ。そして、朝起きた時もそうだよ。朝イチで自分の夢の姿を想像すると、笑顔で一日を始められる。そして、自分の理想に近づく事だけを日々選んで行動に移すんだ。そうすれば、自分を満たすこともできる。自分が望むことだけを選ぶ。人生は短いからね。」
なるほど。
クロは本気なんだ。
もちろん疑ったことはないが、改めてその度合いを思い知らされた。
つまり、その夢の実現のために私は必要でない要素だったんだ、と私のネガティブ思考が妄想を始めたので、蓋をする。
言葉にすると簡単かつ明瞭なことだ。
自分の夢につながる道を進んでいく。
私の夢って、何だっけ。
今でも覚えている。
小学生の頃に、自分の夢について書く作文があった。
小学一年生らしく、サッカー選手やアイドル、なんかが並ぶ中。
私は幸せなお嫁さんになりたいと書いた。
書いた時の記憶まで残っている。
歌手になりたいと心では思っているのに、どうせ無理だろうと頭の中で声が響く。
とうとう、自分で自分を否定して、差し障りのないお嫁さんと書いたのだ。
考えてみると、幼い頃から自分を否定するような悪癖があったかもしれない。
現実的に、普通に考えて、そんな大人たちの物差しを素直に受け止めて、やりもせずに自分の可能性を自分で潰してしまっていたのだろうか。
「幸せになるって、いいじゃん。単純だけど、真理だよ。」
クロは肩を落とす私にそう言った。
「何十億稼いで、とか大きな夢を描く人もいるけど、どんな夢でもいいんだよ。俺は、日本で花火大会に行って、花火を見る。たこ焼きを食べる。そんなことでいいんだ。簡単に思えるかもしれないけど、それができたらとびきり幸せなんだ。そして、いつか家族ができて。そしたら子猫も飼って。自分の部屋で好きなだけゲームをして。それが俺の幸せだよ。」
クロの夢の話を聞きながら、私は自分の幸せについて考えた。
私にとっての幸せって、何だろう。
具体的にすれば、自分が取るべき行動が見えてくる。
そうすれば、自分を満たす術も明らかになる。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。