大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

態度

 

 

その日、日課のアニメを見る時間になってもクロの態度がおかしかった。

なんだかそっけない。

 

いつもならことあるごとに部屋に顔を出し、徐に私に構っては台風のように去っていくのにそれもなかった。

何か機嫌をくすねるようなことしたかな、と目新しい記憶を遡るも思い当たる節がない。

 

アニメを見るときは、いつも必ずクロは私を呼びに来る。

大抵晩御飯の後なので、呼びに来ないことを不思議に思いリビングに向かうと、ちゃっかりアニメを見ようとしているクロがいた。

 

「え?勝手に見ようとしてたん〜?」

と笑いながら問いかけても、ほぼ無視に近い反応しか返ってこない。

 

おかしい。

 

ひとまず、機嫌が悪いならそっとしておこう、と放っておくことにした。

 

「勝手に隣で一緒に見るもんねー」

というたまたま一緒に見てます風作戦は拒否されなかった。

無言は許可とみなそう。

 

アニメを見終わった後も、何も言わずに部屋に戻ろうとするので思わず引き止めた。

 

「私なんかした?なんかあかんことしたんやったらごめん。」

 

たった最近家賃を多く払ってでもこのpisoでの共同生活を続けると決めたのだ。

気まずい空気は、早めに解消しておきたい。

 

「あの人と見ればいいじゃん、アニメ。スペイン語も彼なら優しく教えてくれるかもね。」

ふい、とそっぽを向く。

 

ん?

 

「え、こないだ久しぶりに連絡きた人のこと言うてる?急になんで?」

「会うんでしょ?」

「?会わへんよ?」

「でも向こうの会おうってメッセージにいいよって返事してたじゃん。」

「それ先週のことやし。先週、空いてたらって言われたけど結局その後何も連絡なかったし。」

「でも、さっきまた連絡来てたよね。」

 

状況を整理しよう。

 

 

私には以前言語交換アプリを通して知り合った男の人の知り合いがいる。

彼とは数回会ったのち好意を打ち明けられ、友達としか接することができないと伝えてから疎遠になっていた。

 

しかし、最近数ヶ月ぶりに連絡が来たのだ。

仕事が落ち着いたので、久しぶりに近況報告がてらご飯にでも行かないかというお誘いだ。

彼と会うこと自体に気乗りはしなかったが、クロとの関係でいざこざしていたタイミングでもあったので、他の人と会うべきだろうかという思いでOKの返事をした。

それに、以前彼の友人のもとで働けるかもしれないという話があったのでその下心もあった。

 

ただ、そっけない私の返信で何かを悟ったのか、はたまた単純に都合がつかなかったのかは不明だがその後具体的な日程の提示などはなく一週間が過ぎた。

彼からの連絡がない、すなわち彼と出かける機会がなくなったことに何処か安堵している自分もいた。

 

一週間が経ち彼の存在を忘れかけた頃、新たなメッセージが届いた。

それはご飯のお誘いなどではなかった。

「新しいアイコンいいね。綺麗な建物だ。もちろん君も。」

日本語にするとサブイボがたちそうなキザなセリフだが、まあそんな内容だった。

 

そのメッセージのことを、クロは言っているのだ。

 

 

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

で会話をしています。