ハンバーガー
その日のクロはご機嫌だった。
ベッドに転がって携帯をいじっている私を邪魔しに来たのかと思えば、おもむろに指やお腹を噛まれる。
前からくすぐられたりすることはしょっちゅうだったが、噛まれるとは思っていなかった。
そもそも、潔癖症じゃなかったけか。
まあ、いい。
ご機嫌そうで何よりだ。
ご飯を食べた後、はち切れそうなお腹をさすっていたら
「ユウジ」
と勝手に名付けて撫でたりしている。
ちなみに、完全にアニメに影響された名前である。
買い物から帰ってきたクロは、お母さんに教えてもらったという代物をAmazonで注文しようとしていた。
水に入れるだけで味がつき、簡単に一日に必要な水分を摂取できるという粉だ。
カロリーや余計なものは含まれておらずビタミンがわずかに入っているだけなので、栄養バランスも問題ない。
「到着は来週?遅すぎるよ。その頃には、俺は日本にいて家庭を持ってるよ。君と7人の子供がいるね。」
きっと冗談なのだけれども。
またそんな冗談が聞けるようになったのが嬉しかった。
その日の夜ご飯は、ハンバーガーだった。
ふと思い立ったのか、クロが材料をスーパーで買い揃えてきたのだ。
部屋で転がっている私に
「行こう!」
と言ってお越し手を引いてリビングに連れていく。
テーブルには、美味しそうなハンバーガーが並んでいた。
「これクロが作ってくれたん?すごい!!ありがとう!」
私が作った料理をクロに分けることは何度かあったけれど、こうして正式に何かを作ってもらうのは多分初めてだった。
「たまごキングと、チキンクイーン。」
だそうだ。
鶏肉と豚肉、豪華な二本立て。
このためにせっせとお肉を焼いたり野菜を切る姿を想像すると、なんだか愛おしくなった。
「ほんまに美味しそう。ありがとう。いただきます!」
ちなみに、味もめちゃめちゃ美味しかった。
かなりボリューミーだったので、二人とも一つは次の日用に残しておいた。
二人で膨れたお腹をさすりながら、お決まりのアニメタイムに突入した。
なんてことはない。
そんな平凡な日常を繰り返していく。
そうやって過ごせることが、今の私にはじゅうぶん幸せだと感じられた。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。