悪夢
「今日の夢は最悪だったんだ」
突然クロがそんなことを言い出した。
「へ?どうしたん」
「君と一緒に暮らしてるってのは現実と変わらなかったんだけれど。突然君が白髪のおじいさんを連れてきて。それまでは二人で楽しく話してたのに、急に真剣な顔になるんだ。そして、俺が止めても大丈夫だって部屋に入っていって。」
クロはここがキッチンで、ここが部屋で、と空間に間取り図を再現してくれている。
家の間取りは現実と異なるようだが、そこまで鮮明に描いた夢であることと、それを正確に記憶していることに感服した。
「え、ていうかおじいさん?え?」
「そう、ちゃんと年寄りの。それで、部屋に二人で入っていって。笑い声が聞こえたと思ったら君の悲鳴が聞こえたりして。俺は何もできなくてすごい苦しかった。怒りとか、負の感情がいっぱいで。」
「それで?」
「それで、部屋から出てきた君の目元には涙の跡があって。後ろを向いたらTバックだったんだけど。お尻が真っ赤だったんだ。」
「え??」
いや、なんかもうちょっと怖い話かと思ったら。
まあ十分嫌な話ではあるけど。
この場合Tバックはどちらかというと多分クロの趣味よな?
夢の主やし。
最後にツッコミどころがありすぎてなんかいまいち感情の落とし所がわからない。
混乱している私をよそ目に、
「トラウマだよお」
とクロは悶絶している。
いやでもTバックの時はちょっと嬉しそうやったで。
ほんでそのじいさんは誰やねん。
「普段の夢はもっとファンタジックなんだ。別の世界とか、空を飛ぶドラゴンとか。悪夢なんてここ最近見てなかったのに。」
「いや普段の夢もそれはそれですごいな。」
普段のゲームの影響でファンタジーな世界を冒険する夢を見やすいのだろうか。
だとすると、今回の悪夢は何がどう作用してあんな形になったのだろう。
勝手にTバックを穿かされケツが真っ赤になるまで叩かれた身としては、なんとも腑に落ちないものがある。
いまだに落ち込んでいるクロは放っておいて、私はこっそりとある準備をしにリビングへ向かった。
ついに揃ったプレゼントを、ツリーの下に並べるのだ。
私へのプレゼントは随分前から揃っていたのだが、私からのプレゼントはギリギリになってしまった。
もしかしたら、私からはプレゼントがないかもとヤキモキさせていたかもしれない。
外見で判断できないように、あえてファッションブランドの大きなショップ袋に全てを入れ込んだ。
開封できる日までもう少し。
ドキドキそわそわ。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。
故郷の味
「今日はたこ焼きを食べに行くんだ〜ふふ」
と上機嫌なクロ。
学校の友達と出かけるのだろう。
たこ焼きか。
しばらく食べてないなあ。
東京にいた時すらなかなか出会えず胸を焦がしたものだ。
スペインで本場の味に出会えるのかは分からないが、あの味が恋しい。
熱いとわかっているのに急いで食べて火傷する舌すら懐かしい。
「えええ、いいなあああ」
「へへ〜」
相変わらずクロはヘラヘラしている。
まあ、楽しそうにどこかに出かけていく姿は嫌いじゃない。
少し寂しくもあるけれど、親みたいな気持ちで喜ばしくもある。
そんなわけで、明るく見送った。
今日は久しぶりに天気が良い。
ここ最近はセビージャに珍しく雨量が多く、まともに出かけることができなかった。
晴れてるうちに買い物に行っておくか。
それに、クロへのクリスマスプレゼントがまだ揃っていないし。
クロにプレゼントは複数だと知らされてから、何をあげようかかなり悩んだ。
日本なら思い当たるお店はいくつかあるけれど、スペインでは勝手が違うし。
クロはもはやスペインのアンチかもしれないレベルで露骨に日本贔屓なので、スペインで簡単に手に入るものはあんまりかもしれない。
日本のAmazonで目ぼしいものをいくつか見つけ、それは先日すでに購入すみだ。
発送にしばらくかかるので、それだけ早めに決めておいたのだ。
あとは、スペインでもなんとか手に入るだろうと踏んでいた。
例えば、日本のお酒。
日本のビールは前に試していたけれど、日本酒スパークリングとか。
なんなら私も飲みたいし。
そう思ってAmazonで検索したのだが、発送ができないらしい。
税関に問題があるのだろうか。
とにかく、ネットで買えないのなら現地購入。
中国人がやっているアジアマートで日本のお酒を取り扱っていた気がする。
そこを視察にすることにした。
もう一つは、マスクパック。
これは韓国のものだけれど。
クロがBBクリームや乳液を使っているのは知っているので、マスクパックにもそこまで抵抗がないだろう。
完結型なので消費しやすいし。
私が使ったことのあるものなら選びやすい。
これは、大きめのドラッグストアに行けば韓国コスメコーナーがあるのでそこで見よう。
そんなこんなでいろんなお店に足を伸ばしていたら、帰りは遅くなってしまった。
少し疲れた足取りで家に帰ると、机の上に紙袋が置かれている。
思わずクロの部屋に突撃して、
「これ何!?」
と聞くと
「開けて開けて」
と言われた。
「この匂いもしかして…」
懐かしい、芳しい香りが鼻をかすめる。
予想は的中だ。
「お土産買って来てくれてたん!ありがとう。私もクロにお土産あるよ〜」
足を伸ばしたついでに、お気に入りのchicharronesを買っておいたのだ。
クロのお土産のたこ焼きはなかなかイケるものだった。
私がご満悦な様子を見て、
「今度は一緒に行こうね」
と笑顔だった。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。
狸寝入り
「行かない理由が俺に気を遣うからならその判断はやめてほしい。俺のことは一切気にしなくていいから。」
「いや、だからそもそもそんなこと言ってないし。なんならごめんやけど微塵も考えへんかったわ。私の話聞いてなかったやろ。」
「聞いてたよ。だから、こう言ってるんだ。君の方こそ俺の話聞いてないよ。」
ただ年末の過ごし方について聞いただけなのに。
いつの間にか話がこじれ、こんなやりとりを何度もした。
時には笑けてきて、なんでこうも意地を張っているのかおかしくてたまらなかった。
ただ、私が気に入らないのは「俺のせいでってのは考えないで」というセリフ。
なんか私がクロにめちゃめちゃ依存してるみたいで嫌なんですけど。
もしもクロが私のことを自分に依存している女だと認識しているのだとしたら、好ましくないことこの上ない。
次第に腹が立ってきて、話しても埒があかないのでリビングを後にした。
黒よりも先に部屋を出て、クロのベッドに寝そべってやる。
後から追いついたクロがブーブー言っているが、知ったこっちゃない。
こちとらへそを曲げたんだ。
いつも私が折れてやっているんだから今回は譲ってやらん。
そんな気持ちで本格的に寝る姿勢に入った。
何度も私をどかそうとするも、良い反応が見られないことに耐えかね
「ごめ〜ん」
という声が聞こえた。
「早く寝たいから言ってるだけやろ!適当に言ってるやろ!」
と昼ドラみたいな吐き台詞を飛ばす。
その後もぷんぷんへそ曲げてますよオーラを出していると、一向に効果がないことで諦めたクロがパソコンを起動し始めた。
このままこのベッドで寝てやってもいいのだが。
実のところ、特別何かに腹を立てているわけではない。
なんならクロに非があるわけでもないし。
お互い様。
ただ、自分がうまくスペイン語を使いこなせないフラストレーションをぶつけているだけなのだ。
流石にこれ以上クロを苦しめるのは筋違いかな、と思って大人しく自分の部屋に戻ることにした。
自分の部屋で電気を消し布団に潜った後で、クロが
「おやすみ」
とだけ言いにきた。
「ふん!」
と大声で最後の子供染みた駄々をこねると、電気をつけて枕元にやって来た。
「ほんとたまごっちみたいだね君は。ご飯くれ〜怒ってる〜って。それかポケモン。」
そういう目元は垂れ下がっていて、口角も上がっていた。
クロの機嫌は上々のようだ。
ふむ。
くるしゅうない。
まあ、大人な私が円滑な仲直りのためにわざわざ一芝居を打った甲斐があったというものだ。
…ということにしておこう。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。
ホリデー
最近はすっかりホリデームードの街並み。
スーパーは買いだめの人々が押し寄せ、品薄になっていたり。
同居人の一人も里帰りするらしく2週間家を空けるらしい。
道路を歩きながらふと見上げると、ベランダにちょっとしたイルミネーションが施されていたり。
日本にいる頃から、この季節は好きだ。
なんだか街全体で浮かれているようで。
心をときめかせる音楽と煌めく光にまんまと心が躍る。
個人的には、美味しいものをいくらでも食べられる言い訳もできるし。
さて、日本ではクリスマスというとカップルや恋人未満がソワソワし始めるイベント、というイメージが今や大きいかもしれない。
けれど、スペインでは家族や大人数で家で過ごすのがメジャーだそうだ。
クリスマスが終わればあっという間に大晦日がやってくるし。
日本なら年越し蕎麦を啜りながら笑ってはいけない笑いにお腹をここえて過ごしたり、初詣に出かけたりしていたけれど。
スペインにはどういう習慣があるのだろうか。
どうせなら、それっぽいことを体験してみたいものだ。
そのままクロに伝えると、
「こっちが年越しにすることと言えば、フィエスタだね。」
と温度のない声で答えが返ってきた。
フィエスタ、はいわゆるパーティである。
しかもこの場合は子供たちがツリーの周りを走り回るホームパーティではなく。
酒と色欲に塗れた情景を指しているのだろう。
ひそめた眉頭を見てすぐにそう察した。
クロは淫らな空気感が嫌い。
それは前にも何度か聞いたことがあった。
一度友人の付き合いでクラブに行くことが決まった日は、本当に四六時中ため息をついては行きたくないとごねていた。
お酒を飲んで騒ぐことよりも、その場の空気感に乗じて下心を感じる人間に嫌気が差すのだという。
そんなわけで、クロは私の想像通りにこう続けた。
「君にとっては異国の文化なわけだし。もし行きたいのなら止めはしないけれど。財布を盗まれたり、危ない人たちもたくさんいるだろうし、おすすめはしないよ。俺は、ごめんだね。家でアニメを見てる方がずっと幸せだ。」
ふむ。
パーティか。
もしこれが友人と来ている旅行だったなら、経験の一つとして少し見に行くくらいはしたかもしれない。
けれど、誰の付き添いもなく一人で。
しかも年越しを迎える瞬間を過ごすのは私にも魅力的な選択には思えない。
ましてやネガティブキャンペーンをふんだんに聞かされたあとだ。
「なんか特別に訪ねる場所とかやることあるんかなって思って聞いたねん。そんな危ない感じで一人は、私も行きたいとは思わんわ。」
「俺のことは、気にしなくていいから。行きたければ行っていいよ。」
「え、いや。話聞いてた?」
別に我慢とかしてないんですけど。
やれやれ、また話がこじれてきた。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。
建前
本音と建前
日本の文化というか習性として世界に浸透しているものだと思う。
実際にその言葉自体は知らなくても、外から見た日本人のイメージを上げてもらうと
「周りを尊重する文化」
「直接的な表現をしない」
といったような答えが返って来る確率は高い。
別の言い方をすれば
「自己主張が苦手で周りに流されがち」
「本心で何を考えているのかが分からない」
といったネガティブな印象にもなりうる。
視点を変えて、日本人から見た海外の人たちのイメージはどうだろうか。
そもそも外国人、と一口にいっても世界には無数に国がある。
それでも、大多数の日本人がアメリカやヨーロッパの人たちを想像するのではないだろうか。
そして、それらの人々に抱くイメージは大方
「明るく陽気」
「物言いがはっきりしている」
といった先ほど挙げた日本人のイメージとされているものとは真反対のものだったりする。
確かに、十数カ国を旅行した経験から言うとやはり日本人は控えめな人が多いようには思う。
個人個人を見れば、もちろん世界中どこにでも陽気な人や引っ込み思案な人もいる。
ただ、全体をボヤッと捉えた時の総評で言うとやはり控えめだと思う。
もちろん、私は日本人として20年以上日本で過ごし、いろんな日本人と関わりを持ってきた。
特に大阪を拠点にしていたので、陽気な人なんかいくらでも知っている。
しかし、日本人のイメージとして世界に浸透しているイメージというものは、他の国と比較するとやはりあながち間違っていないように思える。
その理由としては、おそらく他者の尊重の仕方に違いがあるのだと思う。
日本では、周りを見ながらみんなと足並みを揃えつつ前に進むような習性があるように思える。
誰かに直接言われたりしなくても、自ら周りの反応や様子を伺い周囲に馴染むように自分を合わせていく。
それゆえに、“察する“能力が求められる。
一方、いわゆるイメージされる海外の人たち(あえて一括りにしている)は、直接的な表現が多いイメージがないだろうか。
私は好きじゃないけれど、君が好きならいいんじゃない。
そうズバッとありのままの感想を伝える。
そんな海外には日本のような本音と建前なんてなさそうである。
スペインでは、si quieresという表現を頻繁に耳にする。
直訳すると、もし君が望むなら、もしそうしたいなら、といったような意味になる。
このフレーズをどんな時に耳にするかというと、例えば何かの提案をされた時。
「今度飲みに行かない?もし君がそうしたければ。」
こんな感じである。
あまりにも何度も同じようなシチュエーションで聞くことが多いので、スペイン人はみんな相手に委ねたがるなあ、と思っていた。
私の体感としては、
「こちらとしてはめちゃめちゃ行きたい、というほどではないけれど。まあ、そっちがそうしたいのならいいよ。」
といったようなニュアンスで伝わっていた。
なので、そう言われる度あえて反発したくなるあまのじゃく心が刺激される。
つい先日、買い物に行くから何か欲しいものはあるかとクロに尋ねた時にもそやつは登場した。
「ゴミ袋と、いつものピザ。あと、ハムもsi quieres。」
今回も、私は言葉通りに受け取った。
クロのことだから、本当に欲しいのならわざわざ遠回りな表現はしないだろう。
私は別に今はハムはいらないし。
今回は他にも買うものが多くて荷物パンパンだし。
まあ、買わないでおこう。
そして帰宅後。
買い物袋にハムがないことを確認したクロが
「ハムは?」
と不思議そうに聞いてきた。
「え、いや。si quieres言うてたから。私は欲しくないし、他の荷物でめっちゃ重かったし。買ってない。え、欲しかったん?」
あからさまに肩を落としているので今度はこちらが驚いた。
「si quieresは欲しいってことだよ〜!た・て・ま・え!」
ええ。
知らんがな。
はからずしも、建前の難しさを学ぶことができた一日だった。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。
ツリー
Amazonの仕事は早く、あっという間にツリーが届いた。
装飾の担当を司り、枝を広げるところから始めた。
クロはというと、珍しく朝から出かける準備をしていた。
寒がりの本領を発揮してブルブルと震えながらマフラーを首に巻いている。
「どっか行くん?」
「君へのプレゼントを見てくる。」
なるほど。
それならいくらでも行ってきてください。
よろしくお願いしますね。
小さいながらも、組み立てるとそれは立派なクリスマスツリーになった。
無事に一仕事終えたので、私も出かけることにしようか。
明日からは天気が悪くなるみたいなので、晴れている今日のうちに行っておく方が良いだろう。
私が出掛けようとした時、タイミングよくクロが帰ってきた。
「外は寒い?」
「まあね。でも歩いてたらあったかくなるよ。」
確かに、ここ最近は曇りが多くて肌寒い日が続いていたが、気温は20℃を超えることも多い。
基本的に日に当たればあったかいのだ。
まあ、念のためグルグルに巻かれていたマフラーを拝借することにした。
街に出ると、いろんな場所で冬を感じられた。
前まではなかったホットチョコレートのお店。
サッカースタジアムさえも、クリスマス仕様におめかしされていた。
もちろんショッピングモールはクリスマス一色。
至る所でプレゼントやクリスマスグッズが並んでいる。
流れる音楽もホリデーを感じさせるものだ。
複数のお店を行き来して、クロに何をあげようか考えを張り巡らせた。
気づけば辺りは暗くなり始め、気温も下がってきた。
今日のところは引き上げるとしよう。
家に帰ると、電気のついていないリビングに一点の光が見えた。
近づいてみると、それは午前中に飾り付けを終えたクリスマスツリーだった。
どうやらクロが移動させたらしい。
ツリーの足元には、手紙のようなものが置かれている。
そういえば、以前
「これな〜んだ。」
とニヤニヤしながら見せられたような気がする。
可愛らしいシールが貼られている。
一体何が入っているのか。
「プレゼントは、クリスマス当日まで開けちゃダメだからね!」
と念押しされていたことを思い出し、大人しくその日を待つことにした。
これから少しずつ並べられるプレゼントたちを想像すると、なんだか胸にあたたかいものが広がるのを感じた。
全てを開封するクリスマス当日は、きっと笑顔に溢れているだろう。
楽しみだなあ、とワクワクを心にためて。
楽しい1ヶ月になりそうだ。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。
準備
12月。
スペインの街はすっかりクリスマスモードだ。
きっと日本も今頃各地でイルミネーションが煌めいているのだろう。
「見て。」
夜ご飯を終えてベランダで一服しているクロにそう言われ外を見ると、ちょうど道路を彩る光の装飾が取り付けられているところだった。
「この家の前にもイルミネーションするんや!もうそんな時期かあ。中心地も見に行かなあかんわ。」
「もっといろんなイルミネーションがあるよ。魔法使いとか。ここにはなさそうだけど。」
「そんなんあるん?」
「あるよ。今度見に行こう。」
魔法使い、はサンタのことだったかもしれない。
どちらにせよ、初めてのスペインのイルミネーションだ。
そしてスペインでのクリスマスも当然初めて。
街並みの変化にともなって少しずつ実感が湧いてきて、胸がときめく。
しかもクロと一緒にイルミネーションを見に行けるなんて。
絶対楽しいだろうな。
気づけば笑顔になっていた。
とある日。
ご飯を食べながら話していたら、クロが言った。
「今日は、君への最初のプレゼントを探すよ。クリスマスの。」
「へ?」
あまりにも予想だにしない突然の出来事だったので、動揺してアホっぽい声が出た。
クロは丁寧に復唱してくれたが、聞き取れなかったわけではない。
まず、プレゼントをくれるつもりだということに驚いた。
そして、それを直接本人に宣言してくるあたりが面白かった。
けれど、
「最初のってどういうこと?」
「言葉通り。プレゼントはいくつかあるから。」
「なるほど。」
いや、なるほどじゃなくて。
そういうもんなのか?
そういえば、海外のクリスマスは数が大事で小さなプレゼントも含めて何個も用意するみたいなことを聞いたことがあるような。
はてなが浮かびまくる私を差し置いて、クロは嬉しそうに自分の部屋に戻っていた。
しばらくして、部屋から出てきたクロにスマホの画面を見せられた。
「リビングに置くクスマスツリーを買わなきゃいけないよ。これなんかどう?」
Amazonで調べていたらしい。
準備ばっちりやな。
見せてもらったツリーは可愛らしいサイズだ。
これなら邪魔にもならなさそうだし、雰囲気が出ていっか。
緑と白があったが、ぱっと見で惹かれた白を希望しておいた。
「よし。このツリーの下にプレゼントを置くんだよ。」
早速購入手続きを進めているクロは、かなり楽しそうだった。
イベントは全力で楽しむタイプなんやな。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。