大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

歯ブラシ

 

海外旅行をしたことがある人ならば、誰でも一度は経験したことがあるのではなかろうか。

 

長距離フライトの際に配られるポーチの中。

 

宿泊先の洗面台。

 

アメニティを用意していてくれていることは大変ありがたい。

ありがたいのだが。

 

何しろ歯ブラシがデカすぎる。

どんなけ一気に磨きたいねん。

 

いや、そういうことではないか。

 

とにかく磨く毛の部分の面積が広すぎる。

いまだにあのサイズで平気な顔をして磨いている人を見たら思わず凝視してしまう自信がある。

 

特に食べ物や衣類なんかは、海外サイズと言われるとなんとなく日本のものより大きいサイズを想像するだろう。

こと歯ブラシにおいても例外ではない。

でかい。

 

というわけで、私はスペインでは子供用歯ブラシを愛用している。

 

日本なら大人向けにも小さいサイズが販売されているが、こちらではあまり見かけない。

 

てなわけで子供用を愛用させてもらっている。

 

一本ずつ買い揃えるのも面倒なので、その日は2本まとめて買うことにした。

それがこちら。

 

2歳から使用可能、と書かれている。

 

買い物から帰ると、いつものようにクロが飛びついてきた。

「何買ったの?」

毎度お決まりの問いである。

 

一緒に買った食料品を紹介したのち、歯ブラシくんたちも紹介した。

 

「わ!これは君と俺用?青とピンクで。」

そう言っておもむろに2本をわしっとその手に掴むと、何やら寸劇を繰り広げ始めた。

 

「ピンクちゃん!」

「なあに、あおくん。」

「あのね、ぼくピンクちゃん大好きい!」

ご丁寧に声のトーンを上げて一人二役に徹している。

そして、今あおくんとピンクちゃんはクロの手により強制的にチュッチュさせられている。

 

いや、子供か。

 

 

 

買い物も終えたことだし、お風呂にでも入るか。

そう思ったのも束の間。

 

お湯が、出ない。

今のpisoはガスボンベを取り替える式なのだが、ついこないだ出が悪くなって新しいものに交換したばかりだ。

ガスが切れたとは考えにくい。

 

それなのに、何度試してもお湯がつく気配がない。

もう服まで脱いでちょっと水に濡れてるのに。

待てど暮らせど一向に水がお湯に変わらないものだから、流石に凍えてしまいそうだ。

 

数十分粘ったところで諦めて体を拭いて、ガスボンベを調べにいく。

取り付け方に問題はなさそうだ。

 

お風呂場以外の場所で何度も試したが、ダメだった。

ガスを一度外して再度取り付けるとその瞬間はお湯が出るのだが、それも数回繰り返すと反応がなくなる。

どうやら問題は他にあるらしい。

 

クロにも相談して、後日点検に来てもらうことになった。

 

いや、しばらくお風呂入られへんやん!

 

 

 

 

 

 

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脱毛

 

唐突だけれど、告白します。

 

私は、クロの毛を剃るのが好きだ。

 

理由は、なんだかスッキリするから。

以上。

 

クロは自身の毛が気に入らないらしく、将来は脱毛をしたいとも言っていた。

今は肌寒くなり肌を露出する機会が減ったので頻度は落ちたが、自分でたまに剃っている。

 

ある日、Amazonで評価の高い家庭用脱毛レーザーを見つけたらしく、颯爽と購入ボタンを押していた。

そして、それが届いてから一度剃毛を手伝ったのだ。

 

襟足など、自分では届かないからと言う理由だったが、やり始めるとなんとなく楽しくなり気づけば両腕も進んで処理を手伝っていた。

 

私自身の毛は、過去に医療用脱毛をしてからほとんど生えてこなくなっており、毛を剃る快感は自分では得られなくなっていた。

 

男の人ならではの自分よりも濃い毛を、全部剃ってツルツルにした時のなんともいえない達成感。

窓の隙間の埃を全て綺麗に掃除した時のような、なんともいえない充実感が胸に広がった。

 

一度体験してから、私は次はいつかとクロに尋ねては、今はまだだと跳ね返されていた。

はたから見ると、かなりヤバいやつかもしれない。

大丈夫か、私。

 

まあ、そんな待ちに待った機会がようやく訪れた。

題して、クロをツルツルにしてやるんだから〜第二回〜!

 

ネーミングセンスのなさはさておき。

早速作業に取り掛かった。

 

後でレーザーを当てるので、毛は完全に剃りきる必要がある。

脱毛に通っていた時に、剃り残しがあるとその部分はうまくレーザーが当たらないと注意されていた。

電動カミソリをウィンウィン言わせながら、せっせとクロの上半身にカミソリを滑らせた。

 

日本人と比べると、やはり西洋人は毛がこいのだと思う。

髭もみな潤沢に蓄えていらっしゃるし、胸元やへそしたに毛がある人は多い。

そんなわけで、剃り場所には困らなかった。

 

クロには腕だけで良いと言われていたが、視界に入ると剃りたくなってしまう。

上半身の前面は頑なに断られたので、背面に映る。

背中の下側に産毛に近い薄い毛があったのでそこをターゲットにした。

 

いざ剃り始めると、おそらくこれはおしりにつながっているのだろうことが分かった。

洞窟を探検するような気持ちで、どんどん深部へと向かう。

 

今や私とカミソリは一心同体だ。

好奇心に満ちた心でどんどんと突き進んでいく。

 

視界を遮る衣類をずらしさらなる先へ向かう。

初めはおとなしかったクロが、だんだん不審に思ったのか手を止めるように促してきた。

強行突破も考慮したが、その作戦はうまくいかなかった。

 

結果、クロのおしりは中途半端に毛が剃られた状態になってしまった。

改めて全体像を見てみると、その不自然さから笑いが吹きこぼれる。

 

剃ったからには、と有無を言わさずレーザーも当ててやった。

これで、この違和感を解消するためにはさらに剃るしかなくなったというわけだ。

そうなれば、クロも私が剃ることを認めざるを得ない。

 

一人にやり、と悪巧みをした笑顔を浮かべていると、クロが中途半端に剃られたおしりをチラチラと見せてくる。

 

くうう。

そんな剃り残しを見せられたら、綺麗に整えたくなってしまう。

頼むから、早く続きを剃らせてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

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ヘアスタイル

 

クロが散髪に行く。

 

今の髪型を整えるだけにするか、新しいスタイルに挑戦するか。

 

決定権は私にあるとのことだったので、私は挑戦に一票を投じた。

「見たことないから、見てみたい。」

その私の鶴の一声で、クロの方向性が決定した。

 

早速電話をして空きを確認し、1時間もたたない枠で時間が取れたらしい。

 

新しい髪型、どんなんやろか。

ちょっとした好奇心と共に、ニュークロの帰りを待った。

 

 

 

 

しばらくして、クロが帰ってきたのが玄関を開ける音で分かった。

クロのことだから、すぐに見せびらかしに部屋にやってくるだろう。

いつもの習性からそう推測して、あえて私からは出迎えなかった。

 

ただ、しばらくしてもやってくる気配がない。

何なら、一目散に洗面所に入ったきり数十分出てこない。

お腹でも壊したのだろうか、と思ってそっとしておいた。

 

さらに時間が経ち、部屋着に着替えたクロがひっそりと部屋に入ってきた。

見るからにしょぼくれている。

元気がない。

 

「俺は、はげになった…」

と俯きながら、トボトボと。

もちろん本当のおはげ様には失礼なくらい、ちゃんと生えている。

ただ言わんとしていることは何となく分かった。

 

完全に、思っていたような髪型にならなかったのだろう。

完成形をうまく思い描けていなかった私にも、これではないな、と言うことは容易理解できた。

 

かなり短く、さっぱりしている。

似合わないわけではないけれど、クロの理想とするスタイルとは完全に異なっている。

 

クロの新しい髪型がどうのというよりも、意気消沈している姿がかわいそうで可愛くて思わず笑いが込み上げてきた。

堪えられず笑い声を上げると、

「何笑う。」

とさらにヘソを曲げてしまった。

 

「俺は、木だ。風に揺られた木。」

そう言って、自虐ネタを繰り広げられる。

今の私には、そんなしょぼくれた姿さえもおかしく映ってしまって、とうとうお腹を抱えて笑った。

 

「良いやん。それに、髪の毛なんてすぐに伸びるよ。」

「あの美容師は俺の髪を切ったんじゃない。パーソナリティを傷つけたんだ‥」

何とかなだめるも、そこからしばらくクロの自虐ギャグは続き、その度に私はお腹を抱えて笑ってしまう羽目になった。

 

トボトボと部屋に帰ったクロの様子を伺いに部屋を覗くと、まだしょんぼりした空気をまとっていた。

「ご飯作ったろか?」

というと、少しばかり嬉しそうに顔を上げてこちらを見た。

 

しばらくじっと見つめていると、立ち上がったクロに鼻を噛まれる。

キスをされるのかと思ってドギマギしたぞ、と心臓を落ち着けていると今度は肩を噛まれた。

「俺は犬だから、君を綺麗にしてるんだよ。」

 

木から、今度は犬になったらしい。

 

 

 

 

 

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食材

 

キッチンで食材の整理をしながら、何げない会話をしていた。

 

突然、思い立ったかのようにクロが言った。

「君は俺の食材をちょっとずつ食べて、ちょっとずつ俺のお金を使ってる!」

 

誤解がないように断っておくが、食材の共有を提案してきたのはクロの方からだ。

実際のところ、共有する食材を買う頻度はクロの方が高いかもしれない。

けれど、それは単に買い物の頻度の問題だ。

 

クロに限らず、スペインのスーパーでは大量の食材を買い込んでいる。

当初は大家族なのだろう、と考えていた。

しかし、クロが自分のために牛乳を三本、ハムを三個、と買い物カゴに入れるのを見て考えを改めた。

同居している人数はきっと関係がない。

そもそもクロは大食いなほうではないので、一度の消費量が多いからと言う理由ではない。

逆に、私が細々と買い物をしていると不思議そうになぜ一個ずつしか買わないんだ、と聞かれたことがある。

 

きっと面倒臭がりゆえなのだと私は結論づけた。

そんなわけで、私が買い物に行く暇もなくクロが大量に買い込んでくるのが日常になっている。

 

ともかく、先ほどの発言に怒りの類の感情は含まれていないらしく、むしろその表情は明るかった。

何なら嬉しそうに笑っている。

 

「まあ、俺は君の笑顔が見られればそれでハッピーだからいいや。」

どこまで本気なのかは分からないが。

真剣にそう思っているのだとしたら、私はとんだ幸せ者だなあ、と私も笑顔になった。

 

 

 

またある時。

唐突に私の部屋に押しかけてきたクロが、何やら前髪を触りながら洗面所と部屋を往復している。

 

「髪の毛を切りに行く。前髪はどうしたら良いと思う?整えるだけか、ここまで切るか。」

クロの右手はひたいの真ん中あたりを指して、前髪を折り曲げて予行練習している。

 

いや、女子か。

私もそれよくやるわ。

前髪は切るか切らんか、切る前にめちゃめちゃ迷うんや。

切って仕舞えば案外すぐ伸びるし気にならないのだが、変化の前に少し怖気付くのは仕方がない。

結局いつも最後はセットが面倒臭くなるのでしばらくは前髪を作っていないが。

 

目の前のクロはかつての私のようにどうしよう、どうしようと唸っている。

 

「前髪があったら可愛らしい感じで、今のままやとクールな感じやな。」

私の口からは決定打を示さず、クロ自身が決めるように両方肯定するような発言に留めておいた。

実際のところ、今の髪型のクロに見慣れているので他の想像ができない。

 

そんな私の返答に不服そうに、

「君は、どっちが良い?」

と君、の部分を主張してきた。

 

あんなに自分のことは自分で、主義のクロが私の意見を取り入れようとしている状況に驚いた。

好きな方にしたら、と言っても聞かない。

私の好きな方にしたい、と決断を促してくる。

 

私の意見を重要視したいなんて。

満更でもないな。

 

ふふ、と思わずにやけた顔になった。

 

 

 

 

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タコス

 

今日はタコスを作ると決め込んで、買い物をした。

 

 

一度友達の家で振るまってもらってレシピも教わったのだ。

めんどくさがりの私流にかなり工程を簡素化して、スペインに来てから二、三回作っている。

 

タコミートの元になるサルサはスーパーで簡単に手に入る。

ひき肉とそれを和えて、泣きながらみじん切りにした玉ねぎを加える。

ワカモレに玉ねぎを加える方法もあるが、辛い玉ねぎに火を通したかったので今回はお肉と炒めることにした。

ワカモレもアボカドを潰すのがめんどくさいので、ざっくり切ってレモン汁を垂らすだけにする。

後は土台となるトルティーヤにサッと火を通せば完了。

材料費も高くな苦、お手軽にパーティー気分が味わえるのでおすすめだ。

ちなみに、私はパクチー大好き人間なのでパクチーは欠かせない。

 

鼻歌混じりに私がタコスを用意していると、物欲しそうな顔をしてクロが手元を覗き込んでいる。

「食べたいなら、クロの分も作るけど。」

と言うと、子犬のように瞳を輝かせた。

 

具材を食卓に並べて、各自お好みでタコスを作る形式にした。

クロは溢れんばかりの具材をせっせと盛っている。

 

案の定、一口噛むたびにもう片方からぼろぼろと中身がこぼれ落ちた。

ほれ、言わんこっちゃない。

 

「食べにくいから、タコス嫌い。」

などとほざいているが、それはあんたの裁量に問題があるだろう。

 

今日も今日とて率先して洗い物を担当してくれるクロは、せっせと食器を洗ってくれている。

 

「俺はお腹が弱いからタコスみたいな辛いものは進んで食べないけれど、君の作るものは何でも美味しいね。」

不意打ちにそう言われ、単純な私はすぐに上機嫌になってしまう。

 

不思議なものだ。

かつては、料理が下手だといじられることが多かった。

実際、自分でもうまく作れない自分に嘆いたこともある。

だからこそ、たとえお世辞だったとしても、こうして料理の腕を褒められる今の状況に慣れなかった。

 

けれど、考えてみれば当然かもしれない。

確かに昔はうまくできないことが多かった。

それでも、月日が経ち場数を踏むことで多少技術が磨かれることは何も不自然じゃない。

 

私は、周りに言われた言葉で自分自身を評価して、そう言う人間だと思い込んでいたのかもしれない。

そう思ったと同時に、ハッとした。

 

これはきっと料理以外にも言えることだ。

周りが放つ言葉にどんな意図が含まれているのか、嘘か真か、そんなことは受け手側には知るよしもない。

それでも、その言葉をそのまま鵜呑みにするのかどうかは受け手次第なのだ。

 

要は、自分が思いたいように思えばいい。

極端な話だけれど、世間からどれだけ罵られようと、自分は最高な人間だと信じてやまなければ、きっとその人は幸せだろう。

 

私は、周りの評価に影響を受けやすいのかもしれない。

良いことも悪いことも、スポンジのように吸収して一喜一憂する。

それが、たまにしんどくなる。

なぜなら、全てを周りに委ねているからだ。

自分の評価は自分で決めれば良い。

 

なるほどなあ、と勝手に腑に落ちた。

 

私はスペインに暮らすこの短くも長い期間で、愛をものにしたい。

まずは、自分を愛することから。

ありのままを受け入れることを、少しずつ練習しているのだ。

 

誰かに言われて嬉しかったことは素直に受けれて、良い思いをしなければ受け取らないという選択もできる。

それに気づいただけでも、少しは進歩できたのだ。

 

 

 

 

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お粥

 

やっぱり。

生理が始まった。

 

昨日の情緒不安定もきっと生理のせいに違いない。

 

元々生理痛はないタイプだ。

生理前は情緒が乱れたりとんでもなく眠たくなることはあっても、痛みに苦しめられることは思い返してもほとんどない。

 

しかし、季節の変わり目で自律神経が乱れたのか。

冷たくなった空気に体を冷やしてしまったのか。

 

思わず声が漏れるほどに痛い。

ふだん生理痛がない分、対処の仕方がとっさに分からずどうしようもなくベッドの上でうずくまった。

 

ひとまずロキソニンを飲んで眠ることにした。

 

夕方になっても部屋から出てこない私を不思議に思ったのだろう。

クロが部屋に入ってきた。

 

ベッドに横たわる私を見て、

「何か必要なものがあったら言って。」

と頭を撫でてくれた。

 

私が生理痛で起き上がれないことを伝えると、まずは水を持ってきてくれた。

 

お腹もそこまで空いていないけれど、薬を飲みたいし何か口に入れたほうが良いだろう。

 

クロが買ってくるよ、と言ってくれたのでお言葉に甘えることにした。

 

お粥を作ろうと考えていたのだが、

「しんどい時に手間をかけて料理しなくても、野菜のスープが売ってるよ。」

と言われたので、それに従うことにした。

 

クロを待つ間も、目を閉じて眠ろうとしてみたが、もう眠れなかった。

薬の効果が切れてまた痛みが出てきたので、『生理痛 ヨガ』で検索してできそうなものに取り掛かって気を紛らわせた。

 

一通りヨガをしてまた横になっていると、鍵が開く音がした。

クロが帰ってきたようだ。

その後、キッチンで物音がする。

 

しばらくすると、クロが部屋に入って来た。

手には、今温めたのであろうスープが掴まれている。

 

「あっためまでしてくれたん、ありがとう。」

 

一人だったら、痛みに悶えて食事を諦めていたかもしれない。

辛い時の優しさは何よりも染みるものだ。

 

私がスープを掬う隣で、何やら動画を検索している。

Dimashという歌手の音楽を聞かせてくれた。

 

男の人から発せられたとは思えない、綺麗で伸びやかな高音。

低音ももちろん迫力があり、思わず釘つけになるパフォーマンスだった。

おかげで、また痛みを忘れていた。

 

「買い物から何から、ありがとう。」

改めてお礼を伝えると、

「君が言っていた料理はうまく作れるかわからないし。もし失敗したらいけないから。でも、喜んでくれて良かった。」

 

確かにお粥の写真を見せはしたが。

説明の手助けに用いただけで、作ってもらうつもりはなかったのだ。

それでも、作る選択肢を浮かべてくれていたことに驚いた。

 

「うん。めっちゃ嬉しいよ。ありがとう。」

そう伝えると、嬉しそうに目を細めた。

 

 

 

 

 

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体型

 

久々にお洒落をしたけれど、特に行き先は決まっていない。

 

せっかくなので、近所を散策でもしてみよう。

家の周りというのは、決まった道以外通らなくて案外未開拓だったりする。

 

Google mapに頼らずに、直感で右折と左折を繰り返す。

 

しばらく歩くと、可愛らしく飾られた住宅に出くわした。

家の主が手入れをしているのだろう。

目的は分からないが、写真を撮ってくださいと言わんばかりの気合いの入りようだった。

もちろんパシャリ。

 

可愛いおうち

 

一つひとつの置物に作り主の熱い心がこもっていそうだ。

なんだかあたたかい気持ちになるような空間だった。

 

 

家に帰ってから、ネットサーフィンをしていた。

画面の中の人たちはみんな着飾っていて、美しい。

引き締まった体。

女性らしい膨らみ。

 

なんだか。

急に悲しくなってきてしまった。

朝はあんなにご機嫌だったのに。

 

さして高くない控えめな身長。

それでも小柄な方ではなく、体重もそれなりにある。

胸元の脂肪は少ない方ではないが、カップ数に比べると主張しておらず少し寂しい。

一部の知り合いからは羨ましがられたこともあるが、それは脂肪を蓄えているというだけだ。

細身なのに出るところは出てる、漫画みたいな身体の人はごまんといる。

それに比べれば、なんとだらしない身体だろう。

 

自分を苦しめるような言葉がぐるぐると頭を駆け回り、埋め尽くす。

あ、だめだ。

そう思った頃にはもう遅くて、自ら負のスパイラルに身を投げてしまっていた。

 

考えまいとしてもなかなか元気が取り戻せない。

アニメを見ながらも心ここにあらずのくらい表情をした私に気づき、クロが頭を撫でてくれる。

理由はわからずとも、慰めようとしてくれたのだろうか。

 

「何があったんだい?」

そう聞かれ、私はさっきまで考えていたことを話した。

自分の体型に自信が持てない、と。

 

その告白を聞いたクロは心底驚いたような顔をしたので、私が驚いた。

「なんでそんなことを思うの?君はすっごくセクシーだよ。今朝の格好だって、スーパーセクシーだったよ。」

 

今朝の格好はニットにデニムだった。

特にどこかを露出したわけでもないし、何かが強調されるようなフォルムでもなかったはずだ。

一体どこがセクシーだったのか私には微塵も分からなかったが、クロは真剣だった。

 

「でも、くびれもないし…」

「細身が好きな人ももちろんいるだろうけど。細ければ良いってわけじゃないよ。何より君はまず完璧な顔だし。身体もそうだよ。世界中の男が君の虜になるよ。」

 

かなりクロの個人的趣向に基づいた主張ではあったが、私の機嫌を取り戻すには十分だった。

 

またしても私はクロに甘えて自分の機嫌をとってもらってしまったわけだが。

 

クロの一言であっという間に自信を取り戻せたように。

全ては考え方ひとつなのかもしれない。

私が私の身体を愛してあげなくてどうするんだ。

 

前にクロが言っていた、自分を愛するということ。

やっぱり、私はその方法を今身を持って学んでいるところなのだ。

 

ちょっとずつかもしれないけれど。

クロに助けてもらうことがまたあるだろうけれど。

 

少なくとも、数時間前よりは自分の身体が好きになれた。

 

 

 

 

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