悲劇のヒロイン
一向に既読がつかないチャット履歴を何度も更新しては、肩を落とす。
やっと、ちょっとだけこの思考を止められそうだったのに。
結局私は自ら不安になっているんじゃないか。
「悲劇のヒロインぶってもあかんで。」
子供の頃に父親にそう叱られたことがある。
きっと私のこの悪癖は幼い頃からある。
かまってちゃんのくせに甘え下手なので、拗らせた結果最終的に最悪な形で爆発するのだ。
爆発する頃には甘え、なんて可愛いものではなく、ただの愛に飢えたゾンビのようになってしまう。
つまるところ、愛の受け取り方も、愛し方さえも下手くそなのだ。
それはずーっと抱えている自分の一部で、どうにかしたいと思いつつもどうにもならず、なんともないふりをしながら今もこうして背負ったままでいる。
でもこのままじゃ、この先もずっとこの重たい荷物と人生を歩むことになる。
重いし、暗くて、早く手放したほうがいいに決まっている。
私は今、この重荷を手放す試練と向き合っているのかもしれない。
そして夜は、考え事には向いていない。
誰かが多分そう言っていた。
つい悲観的に考えてしまいがちだからだ。
だとしたら、私のこの状況は最も考え事に向かないだろう。
暗い部屋で一人、悲観的な考えを張り巡らせている。
考え始めると止まらなくなるから、強制的に違うことで脳の容量を埋めようと数独をすることにした。
できるだけ難しいやつにして、考える隙を自分に与えない。
そんなことをしているうちに、クロがゴソゴソと帰ってきた。
すっかり深夜の2時が目の前だった。
どう迎えようかとふと考えた。
寝たふりをして反応を見ようか。
いや、クロのことだから、そんなことをしていたらそっと寝たままにされてしまうかもしれない。
朝が来る前に、彼と話をしたい。
そう思って、起き上がって彼を出迎えることにした。
「何食べたん?」
なるべく明るいトーンで話す。
マクドで深夜2時までって高校生かよ。
予想外の返答に思わず吹き出し、緊張も自然に解けた。
「全然帰ってこおへんから、寂しかった。」
自然に、素直な気持ちを吐き出すことができた。
「ふふ。かわいい。」
「ふん。お仕置きや。」
クロの上に体重を乗せて、彼の邪魔をする。
それでも、心なしか嬉しそうに頭を撫でられて、額にキスまで落とされた。
なんだ。
単純なことじゃないか。
不安になる必要なんてなかった。
今日もこうして、クロを抱きしめて眠ることができる。
私よりも体温の高いクロに触れていると、自然に眠りの中に落ちていった。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。