大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

メッセージ

 

もともとクロと私はメッセージのやり取りがほとんどない。

 

一緒に住んでいるので直接話すほうが早いからだ。

チャットの履歴にも大した会話は残っていない。

 

誰もいない家。

きっと買い物にでも行ったのだろう。

すぐに帰ってくるはずだ。

でも念のためどこに行ったのか、メッセージ送ってみるか。

いや、こっちから送るなんて悔しい。

 

つまらないプライドと葛藤しながら、久々の一人の夜を満喫するふりをして、またクロのことばかり考えていた。

 

いつもならクロがタバコをふかしているベランダで、風を浴びながらできる限り冷静に考えようと自分をなだめつけた。

一旦落ち着こう。

 

感情なしに、事実だけを客観的に見てみよう。

 

ここ数日、向こうから私に構ってくることが少なくなった。

これは事実だ。

けれども、その理由として私を苦しめているものは全て私の憶測でしかない。

もしかしたら、彼なりの配慮かもしれないし、私に飽きた以外の理由があるかもしれない。

 

では、これ以上不安を抱えないために私ができることは何か。

正直に、彼に伝えることだ。

態度が変わったと感じていることと、それによって不安を覚えていること。

 

そんなことを伝えて、うざがられないだろうか。

と、また私の黒いもやもやがいらぬことを考える。

しかし確かに、伝え方は重要だ。

問い詰めたりヒステリックに嘆くのではなく、不安なんだよと可愛く伝えられれば100点満点だろう。

 

ヤケクソになって捨て台詞を吐いたところで良い展開が待ち構えていないのは明らかだ。

 

クロのいない一人の家は心細くて、結局我慢できずに一通のメッセージを送った。

「帰りは遅くなる?」

10分も経たずに返ってきた返信は

「学校の友達と晩御飯に行くところだよ。なんで?」

と非常に端的な内容だった。

あまりに簡素な返事にまたいらぬ被害妄想が膨らむ。

 

私は、クロのなんなのだろう。

 

以前、クロはこう言っていた。

「恋人ができたら、他の異性とは連絡を取ったりしないよ。自分がされたらヤキモチ妬いちゃうからね。」

だから私は、彼は彼女を心配させるようなことはしない人だと解釈した。

例えば、この状況なら聞く前から教えてくれるような人だろうと。

 

でも、それはあくまで私のものさしで。

彼にとってはなんてことないことだから言わなかったのかもしれない。

 

でも。でも。

聞き分けの悪い自分が一向に納得しない。

人によるとか、そもそも国や文化の違いがあったとしても。

本当に大切に思う相手のことは、誰だって大切にするはずだ。

その“大切”が、少なくとも今私には感じられない。

クロが、私を“大切”にしていると思える瞬間が、ほとんどない。

だからこんなにも不安でたまらないのだ。

「いいやん!楽しんできて〜」

なんていい子ちゃんの返事を送っておきながら、実際私の表情は暗い。

 

私は、クロにとって大切な存在ではないのかもしれない。

そんな考えが、心を蝕んでいくようで。

黒いもやに全てが覆われていく。

 

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

で会話をしています。