私たちの関係
私たちの関係についてどう思っているのか。
それは私も聞きたくて、でも聞けずにいたことだ。
「最近はなんか態度が変やったから、私も聞きたいと思ってた。でも、どういう意味?」
「君は、真剣な関係性を求めてる?」
「うん。遊びのつもりはないけど…もしかして、私誤解してた?前に恋人作らんって言ってたけどどう考えてるか聞いた時、クロが私のことはほんまに好きやって言ってくれたから。てっきりそういうことかと思ってたんやけど。クロは真剣じゃなかったん?」
「君がその質問をしてきたから、君も了承の上なんだと思ってたんだ。でも最近はもっと真剣な関係性を求めてるような気がして。昨日も俺の質問を無視してどこに行くかも告げずに出て行ったし。」
「それはごめん。今生理前で、情緒が不安定やねん。最近クロの態度が変やから私なんかしたんかなって不安になってて、あの時はああでもせな泣いてしまいそうやったから。一人になる時間が欲しかってん。」
「怒ってるわけじゃないよ。」
歩みを進めながらクロは続けた。
「俺は学校を卒業した後日本に行って、すぐ戻ってくるかもしれないしどうなるかは分からない。母親とも話したけれど、学校は1年で辞めるかもしれない。とにかく先が保証できないんだ。だから、君が真剣な付き合いを望むのなら、この関係は続けられない。」
クロが何を言いたいのか唐突に理解して、涙が頬を伝うのが分かる。
今、この関係性に終止符が打たれようとしている。
そこからはどうしようもなく湧き出た感情が目からこぼれ落ちて、止めようがなかった。
「なんで未来の心配をして今の幸せを感じたらあかんの?」
「私はクロと毎日一緒に過ごして、お互い好きで、それだけで幸せやねん。それじゃあかんの?」
溢れ出した感情は、啖呵を切ったようにぼとぼととこぼれ落ちる。
すれ違う人に気づかれないように、声を押し殺して、頬を伝う水滴を拭った。
「でもこのまま続けてたらお互いもっと好きになって、別れがもっと辛くなる。だから今話さないといけないと思ったんだ。」
クロのその言葉は少しも間違っていない。
でも、根本的な部分で理解ができなかった。
「私、普段から先のことあんまり考えへんタイプやねん。今を生きたい人間やから。この瞬間に最善を選べば、なんとかなるって精神で生きてきてん。クロとのことも、楽観的に考えすぎてたかも知らんけど。その時がきたら、考えればいいかなって思ってた。」
「俺も、基本的には先のことを考えずに今を生きる人間だよ。でも、今回のことに関しては、特別だから。違う国に行くっていう夢があって。俺の将来はすごく不安定だ。」
「先のことが分からへんから無理って。そんなんみんなやん。誰だって先のことなんか分からへんよ。」
そう言った頃には、私は本格的に泣き始めていた。
それに気づいたクロに立ち止まることを提案されて、人気のない駐車場で足を止める。
思わず車の陰にしゃがみ込んだ。
クロは心配そうに、でも私に触れずにこちらを覗き込む。
その意図的な距離がもどかしい。
もっと後に伝えたら、辛くなるからって。
今でも十分辛いのに。
「ひどい。自分勝手やと思わへんの?やめようって言われても、今更遅いわ。もう無理や。」
責めたいわけじゃないのに、彼を責めるような言葉が浮かんできて。
でも伝えたいわけじゃないから、伝わらないように日本語でこぼした。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。