翌日
次の日寝て起きたら、かなり冷静になっていた。
昨夜は嫌な夢を二種類も見たが、やはり睡眠の効果は偉大だ。
そういえば、私は基本的に寝れば嫌なことも忘れるタイプの人間だった。
落ち着いて、もう一度頭を整理しよう。
昨日の記憶を蘇らせる。
昨日は、世界に終わりを告げられたような気分だった。
もう自分の力ではどうすることもできなくて、噛み締めていた幸せを諦めなくてはならない。
心に穴が空いたどころか、私の人生を記すノートが明日の分から全部ちぎり取られたような喪失感だった。
悲しい、辛い、どうして。
そんな感情がぐるぐると渦巻いて、プチパニックに陥っていた。
一旦、誰かに話を聞いてもらおう。
この頭の中の情報と胸の中の感情を外に出すことで、整理ができるだろう。
話した先にどうなるとかよりも、まずは話しを聞いてもらうだけでも楽になるはずだ。
そう思って、昨日寝る前に友人に連絡をしておいた。
快く受け入れてくれた友人には感謝の限りだ。
友人に話しながら気づいたこと。
昨日、私は全く話題に沿って話ができていなかったかもしれない。
私の解釈が間違っていなければ、彼はこれからどうするか、二人の選択肢を考えようと言ったはずだ。
それに対して私は、それを別れの合図だと解釈して泣き喚いただけ。
なんてことだ。
思い返すと、我ながら恥ずかしい。
生理前だからと言っても、かなり冷静さを欠いていた。
ここまで冷静さを欠いてしまったのはいつぶりだろうか。
ここ最近は、何に対しても熱意を持てなくて冷めきった人間になったのだと思っていた。
周りからも、クールだとか冷めていると言われることもあった。
そんな冷鉄人間でも泣くんだなあ、なんて他人事のように思った。
昨日の会話を整理しながら、どんどん客観的に考えられるようになってきた。
まず、まだ出会って1ヶ月そこらの彼が、ここまで真剣な話をしてくれることは、素直にありがたい。
昨日彼も言っていたが、本当にどうでも良い相手ならこんなことは言わずにただよろしくやるだろう。
彼自身にも芽生えた感情があって、私たち二人の感情を考えた時に、話をする必要があると結論付けたと言っていた。
話のカギは、彼の夢と今の状況。
日本に住みたいがために語学学校に通っている現在と、卒業後に日本に行くというかねてからの夢。
けれど、語学学校は日本に行くための手段でしかなくて、彼自身は4年間通い続けることに気が乗らないようでもあった。
昨日も母親と、もし学校を早期退学したら〜という話を電話でしたらしい。
その内容は詳しく聞けていないが、まだ通い始めて1ヶ月ほどだし、この先気が変わらないとも言い切れない。
そんな、全てが不確実で不安定な自分の将来をもって、真剣な付き合いなんてできない、というのが彼の主張だった。
そしてそのありのままを伝えてくれた誠実さには素直に感謝している。
けれど、私からしたら、将来が不安定なことなんて当たり前だ。
彼に限ったことではない。
だからこそ、そこを問題視する意味が、理解できるけれど納得できなかった。
※「」=スペイン語
「」=日本語
で会話をしています。