大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

小土産

 

どこかに出掛けてから家に帰ってくるとき、割と高頻度でちょっとした手土産を買って帰ってくる。

 

それがクロだ。

そしてここ最近は、その頻度がいつにも増して高い。

今週だけでいえば、100%である。

 

今日は、そんな小さなお土産たちをせっかくなので紹介しようと思う。

 

 

エントリーNo.1

日本では出逢えないであろう日本のお菓子

 

Kawaii Donuts chan

 

日本でいうところの駄菓子にあたるだろうか。

 

握り拳よりも小さいミニドーナツがペイントされているこちら。

可愛らしいピンクの上から星やハートの形をしたカラフルなチョコチップが散りばめられている。

まさにKawaii

友だち、の意図は読めないが確かにテンションが上がる装飾である。

販売会社はスペインで有名なパンの会社だった。

 

パッケージの右側には、抽選で4人組の日本旅行が当たると書かれている。

しかしその直後のホテルカラオケは一体ホテルなのかカラオケなのか、ツッコミどころは満載である。

 

つまるところ、スペインから見た日本のイメージはこんな感じ。

キラキラポップ、Kawaii国ということだろうか。

興味深い。

 

ちなみに、きっちり3つ美味しくいただきました。

 

 

 

続いてエントリーNo. 2

飲んでいいのかわからないドリンク

 

Nonde ha ikenai

 

読み取れる情報全てが、私の本能に飲むなと訴えかけてくるこちら。

 

これこそスペイン式駄菓子屋があれば置いてありそうだ。

絵の子供が嬉しそうに口を開けているが、私はどこか前向きになれなかった。

 

ただ、せっかく買ってきてくれたので

「ほんまに飲んでいいやつやんな?」

と何度も確認したのちやっと口にすることができた。

 

味は、なんというか酸っぱいりんごと人工的な甘味料の味。

子供たちはこれを進んで口にするのだろうか。

素直に疑問符が浮かんだ。

 

一気に飲み干したクロは私の反応を好奇心に満ちた瞳で待ち構えている。

「面白い味」

とだけ答えておいた。

 

 

 

エントリーNo. 3

ありがとう!贅沢ポテト

 

Poteto oishi

 

最後のこちらは、スペインで幅をきかせているバーガーキングさんのシロモノ。

スペインでは、マクドナルドよりバーガーキングの店舗数の方が圧倒的に多い。

 

おそらく自分は店内でハンバーガーをランチにしたのだろう。

私へのお土産ということで、ベーコンと玉ねぎとチェダーチーズがとピングされたポテトをテイクアウトしてくれたらしい。

バーガーキングに限らず、このトッピングは人気があるらしくよく見かける。

バルのメニューにもあったりする。

 

そういえば、2、3日前に突然ポテトが食べたくなってクロにも話したな。

もしかしたらそれを覚えていてくれていたのだろうか。

どちらにせよ、ポテト欲が満たせることは嬉しい。

 

 

これからも、たまにちょっと変わったお土産たちが私の元に運ばれてくるのを楽しみに待っていようと思う。

 

 

 

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

で会話をしています。

お風呂事情

 

ヨーロッパの人たちはお風呂に毎日入らない。

そもそも、日本人以外はほとんどシャワーで済ます国がほとんど。

 

そんな噂を耳にしたことはないだろうか。

 

私も実際にスペインに来る前は、お風呂事情にかなり不安を抱いていた。

 

お風呂に入るという習慣がないこと。

シャワーだとしても、朝に入る人が多いこと。

 

そんなイメージがあったので、今までの自分と大幅に異なる習慣に習うことができるのかが不安だった。

 

しかし、スペインで暮らし始めてしばらくすると、あっという間にそんな生活に慣れている自分がいた。

 

夏の間はさすがに汗を流したくて毎日シャワーを浴びていたけれど、日本にいる時ほどではなかった。

つまりは湿度の違いである。

おそらくだが、日本だと湿気によるベタつきが不快感となってシャワーを浴びたくなることが多いように感じる。

寝汗も同様で、朝起きた時に不快感からすぐにシャワーだけでも浴びたくなるのだ。

 

けれども、スペインの南部では湿度がかなり低く、夏場でも日本よりも格段にさっぱりしていた。

気温は遥かに日本よりも高いのに、まとわりつくようなジメジメ感は圧倒的にこちらの方が少なく感じた。

 

晴れて猛暑が去っていき涼しくなってきた現在なんかは、シャワーを浴びたいという欲求に責め立てられることはかなり少なくなった。

観察していると、入浴(といってもシャワーのみだが)の頻度は人それぞれではあるものの、毎日欠かさずシャワーを浴びる人は確かに少ないように思う。

 

2、3日経ってやれやれ、そろそろシャワー浴びるか。

仕方ないな。

くらいのスタンスのスペイン人をよく見る。

 

日本人である私にとっては、正直冬場に3日くらい体を洗わなくても平気そうだな、と感じている。

もちろん汗をかくくらい体を動かさなければだけれど。

体臭が日本人よりも強いヨーロッパの人たちは、匂ってきたらシャワーを浴びる、という感覚なのかもしれない。

 

その証拠に、日本と違って出かける前にシャワーを浴びることが多い。

日本だと、一日の汚れや疲れを落とす、といった名目で一日の終わりにお風呂に入る人が多いだろう。

 

体を洗う、という概念で言えば外出前に綺麗にする、という点で理に適っているのかもしれない。

 

 

もう一つ、実際に私が感じたことがある。

それは水圧の違い。

もちろんこれも場所によるとは思うが、平均すると日本が圧倒的に水圧が強いと思う。

ざっくりいうと、お風呂に入るためのインフラは日本の方が遥かに優れている。

 

お風呂に入る習慣があまりないからインフラに力を入れていないのか、インフラが整っていないからそういう習慣になったのか。

そこは知る由もないが、設備面で圧倒的に違いがある。

 

そこに水道代やガス代などコスト面での問題も加えられる。

日本のようにバスタブにお湯をためてゆっくりお風呂に入る、という状況はなかなか実現しにくい。

 

そもそもお風呂の温度が下がらないように熱気を閉じこめる作りになっていない。

お風呂場にトイレや洗面台があり、広いのだ。

これではお湯をためてもあっという間に冷めてしまうだろう。

そもそもバスタブがなくシャワーだけの家も多い。

 

 

しばらくスペインで暮らして、こっちでの生活にも慣れてきた。

シャワーだけの生活にも慣れてきたのだが。

冬本番を迎える頃には、さすがにあったかいお風呂が恋しくなってしまうなあ、と懸念している。

 

 

 

 

 

 

 

「」=スペイン語

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歯ブラシ

 

海外旅行をしたことがある人ならば、誰でも一度は経験したことがあるのではなかろうか。

 

長距離フライトの際に配られるポーチの中。

 

宿泊先の洗面台。

 

アメニティを用意していてくれていることは大変ありがたい。

ありがたいのだが。

 

何しろ歯ブラシがデカすぎる。

どんなけ一気に磨きたいねん。

 

いや、そういうことではないか。

 

とにかく磨く毛の部分の面積が広すぎる。

いまだにあのサイズで平気な顔をして磨いている人を見たら思わず凝視してしまう自信がある。

 

特に食べ物や衣類なんかは、海外サイズと言われるとなんとなく日本のものより大きいサイズを想像するだろう。

こと歯ブラシにおいても例外ではない。

でかい。

 

というわけで、私はスペインでは子供用歯ブラシを愛用している。

 

日本なら大人向けにも小さいサイズが販売されているが、こちらではあまり見かけない。

 

てなわけで子供用を愛用させてもらっている。

 

一本ずつ買い揃えるのも面倒なので、その日は2本まとめて買うことにした。

それがこちら。

 

2歳から使用可能、と書かれている。

 

買い物から帰ると、いつものようにクロが飛びついてきた。

「何買ったの?」

毎度お決まりの問いである。

 

一緒に買った食料品を紹介したのち、歯ブラシくんたちも紹介した。

 

「わ!これは君と俺用?青とピンクで。」

そう言っておもむろに2本をわしっとその手に掴むと、何やら寸劇を繰り広げ始めた。

 

「ピンクちゃん!」

「なあに、あおくん。」

「あのね、ぼくピンクちゃん大好きい!」

ご丁寧に声のトーンを上げて一人二役に徹している。

そして、今あおくんとピンクちゃんはクロの手により強制的にチュッチュさせられている。

 

いや、子供か。

 

 

 

買い物も終えたことだし、お風呂にでも入るか。

そう思ったのも束の間。

 

お湯が、出ない。

今のpisoはガスボンベを取り替える式なのだが、ついこないだ出が悪くなって新しいものに交換したばかりだ。

ガスが切れたとは考えにくい。

 

それなのに、何度試してもお湯がつく気配がない。

もう服まで脱いでちょっと水に濡れてるのに。

待てど暮らせど一向に水がお湯に変わらないものだから、流石に凍えてしまいそうだ。

 

数十分粘ったところで諦めて体を拭いて、ガスボンベを調べにいく。

取り付け方に問題はなさそうだ。

 

お風呂場以外の場所で何度も試したが、ダメだった。

ガスを一度外して再度取り付けるとその瞬間はお湯が出るのだが、それも数回繰り返すと反応がなくなる。

どうやら問題は他にあるらしい。

 

クロにも相談して、後日点検に来てもらうことになった。

 

いや、しばらくお風呂入られへんやん!

 

 

 

 

 

 

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脱毛

 

唐突だけれど、告白します。

 

私は、クロの毛を剃るのが好きだ。

 

理由は、なんだかスッキリするから。

以上。

 

クロは自身の毛が気に入らないらしく、将来は脱毛をしたいとも言っていた。

今は肌寒くなり肌を露出する機会が減ったので頻度は落ちたが、自分でたまに剃っている。

 

ある日、Amazonで評価の高い家庭用脱毛レーザーを見つけたらしく、颯爽と購入ボタンを押していた。

そして、それが届いてから一度剃毛を手伝ったのだ。

 

襟足など、自分では届かないからと言う理由だったが、やり始めるとなんとなく楽しくなり気づけば両腕も進んで処理を手伝っていた。

 

私自身の毛は、過去に医療用脱毛をしてからほとんど生えてこなくなっており、毛を剃る快感は自分では得られなくなっていた。

 

男の人ならではの自分よりも濃い毛を、全部剃ってツルツルにした時のなんともいえない達成感。

窓の隙間の埃を全て綺麗に掃除した時のような、なんともいえない充実感が胸に広がった。

 

一度体験してから、私は次はいつかとクロに尋ねては、今はまだだと跳ね返されていた。

はたから見ると、かなりヤバいやつかもしれない。

大丈夫か、私。

 

まあ、そんな待ちに待った機会がようやく訪れた。

題して、クロをツルツルにしてやるんだから〜第二回〜!

 

ネーミングセンスのなさはさておき。

早速作業に取り掛かった。

 

後でレーザーを当てるので、毛は完全に剃りきる必要がある。

脱毛に通っていた時に、剃り残しがあるとその部分はうまくレーザーが当たらないと注意されていた。

電動カミソリをウィンウィン言わせながら、せっせとクロの上半身にカミソリを滑らせた。

 

日本人と比べると、やはり西洋人は毛がこいのだと思う。

髭もみな潤沢に蓄えていらっしゃるし、胸元やへそしたに毛がある人は多い。

そんなわけで、剃り場所には困らなかった。

 

クロには腕だけで良いと言われていたが、視界に入ると剃りたくなってしまう。

上半身の前面は頑なに断られたので、背面に映る。

背中の下側に産毛に近い薄い毛があったのでそこをターゲットにした。

 

いざ剃り始めると、おそらくこれはおしりにつながっているのだろうことが分かった。

洞窟を探検するような気持ちで、どんどん深部へと向かう。

 

今や私とカミソリは一心同体だ。

好奇心に満ちた心でどんどんと突き進んでいく。

 

視界を遮る衣類をずらしさらなる先へ向かう。

初めはおとなしかったクロが、だんだん不審に思ったのか手を止めるように促してきた。

強行突破も考慮したが、その作戦はうまくいかなかった。

 

結果、クロのおしりは中途半端に毛が剃られた状態になってしまった。

改めて全体像を見てみると、その不自然さから笑いが吹きこぼれる。

 

剃ったからには、と有無を言わさずレーザーも当ててやった。

これで、この違和感を解消するためにはさらに剃るしかなくなったというわけだ。

そうなれば、クロも私が剃ることを認めざるを得ない。

 

一人にやり、と悪巧みをした笑顔を浮かべていると、クロが中途半端に剃られたおしりをチラチラと見せてくる。

 

くうう。

そんな剃り残しを見せられたら、綺麗に整えたくなってしまう。

頼むから、早く続きを剃らせてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

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ヘアスタイル

 

クロが散髪に行く。

 

今の髪型を整えるだけにするか、新しいスタイルに挑戦するか。

 

決定権は私にあるとのことだったので、私は挑戦に一票を投じた。

「見たことないから、見てみたい。」

その私の鶴の一声で、クロの方向性が決定した。

 

早速電話をして空きを確認し、1時間もたたない枠で時間が取れたらしい。

 

新しい髪型、どんなんやろか。

ちょっとした好奇心と共に、ニュークロの帰りを待った。

 

 

 

 

しばらくして、クロが帰ってきたのが玄関を開ける音で分かった。

クロのことだから、すぐに見せびらかしに部屋にやってくるだろう。

いつもの習性からそう推測して、あえて私からは出迎えなかった。

 

ただ、しばらくしてもやってくる気配がない。

何なら、一目散に洗面所に入ったきり数十分出てこない。

お腹でも壊したのだろうか、と思ってそっとしておいた。

 

さらに時間が経ち、部屋着に着替えたクロがひっそりと部屋に入ってきた。

見るからにしょぼくれている。

元気がない。

 

「俺は、はげになった…」

と俯きながら、トボトボと。

もちろん本当のおはげ様には失礼なくらい、ちゃんと生えている。

ただ言わんとしていることは何となく分かった。

 

完全に、思っていたような髪型にならなかったのだろう。

完成形をうまく思い描けていなかった私にも、これではないな、と言うことは容易理解できた。

 

かなり短く、さっぱりしている。

似合わないわけではないけれど、クロの理想とするスタイルとは完全に異なっている。

 

クロの新しい髪型がどうのというよりも、意気消沈している姿がかわいそうで可愛くて思わず笑いが込み上げてきた。

堪えられず笑い声を上げると、

「何笑う。」

とさらにヘソを曲げてしまった。

 

「俺は、木だ。風に揺られた木。」

そう言って、自虐ネタを繰り広げられる。

今の私には、そんなしょぼくれた姿さえもおかしく映ってしまって、とうとうお腹を抱えて笑った。

 

「良いやん。それに、髪の毛なんてすぐに伸びるよ。」

「あの美容師は俺の髪を切ったんじゃない。パーソナリティを傷つけたんだ‥」

何とかなだめるも、そこからしばらくクロの自虐ギャグは続き、その度に私はお腹を抱えて笑ってしまう羽目になった。

 

トボトボと部屋に帰ったクロの様子を伺いに部屋を覗くと、まだしょんぼりした空気をまとっていた。

「ご飯作ったろか?」

というと、少しばかり嬉しそうに顔を上げてこちらを見た。

 

しばらくじっと見つめていると、立ち上がったクロに鼻を噛まれる。

キスをされるのかと思ってドギマギしたぞ、と心臓を落ち着けていると今度は肩を噛まれた。

「俺は犬だから、君を綺麗にしてるんだよ。」

 

木から、今度は犬になったらしい。

 

 

 

 

 

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食材

 

キッチンで食材の整理をしながら、何げない会話をしていた。

 

突然、思い立ったかのようにクロが言った。

「君は俺の食材をちょっとずつ食べて、ちょっとずつ俺のお金を使ってる!」

 

誤解がないように断っておくが、食材の共有を提案してきたのはクロの方からだ。

実際のところ、共有する食材を買う頻度はクロの方が高いかもしれない。

けれど、それは単に買い物の頻度の問題だ。

 

クロに限らず、スペインのスーパーでは大量の食材を買い込んでいる。

当初は大家族なのだろう、と考えていた。

しかし、クロが自分のために牛乳を三本、ハムを三個、と買い物カゴに入れるのを見て考えを改めた。

同居している人数はきっと関係がない。

そもそもクロは大食いなほうではないので、一度の消費量が多いからと言う理由ではない。

逆に、私が細々と買い物をしていると不思議そうになぜ一個ずつしか買わないんだ、と聞かれたことがある。

 

きっと面倒臭がりゆえなのだと私は結論づけた。

そんなわけで、私が買い物に行く暇もなくクロが大量に買い込んでくるのが日常になっている。

 

ともかく、先ほどの発言に怒りの類の感情は含まれていないらしく、むしろその表情は明るかった。

何なら嬉しそうに笑っている。

 

「まあ、俺は君の笑顔が見られればそれでハッピーだからいいや。」

どこまで本気なのかは分からないが。

真剣にそう思っているのだとしたら、私はとんだ幸せ者だなあ、と私も笑顔になった。

 

 

 

またある時。

唐突に私の部屋に押しかけてきたクロが、何やら前髪を触りながら洗面所と部屋を往復している。

 

「髪の毛を切りに行く。前髪はどうしたら良いと思う?整えるだけか、ここまで切るか。」

クロの右手はひたいの真ん中あたりを指して、前髪を折り曲げて予行練習している。

 

いや、女子か。

私もそれよくやるわ。

前髪は切るか切らんか、切る前にめちゃめちゃ迷うんや。

切って仕舞えば案外すぐ伸びるし気にならないのだが、変化の前に少し怖気付くのは仕方がない。

結局いつも最後はセットが面倒臭くなるのでしばらくは前髪を作っていないが。

 

目の前のクロはかつての私のようにどうしよう、どうしようと唸っている。

 

「前髪があったら可愛らしい感じで、今のままやとクールな感じやな。」

私の口からは決定打を示さず、クロ自身が決めるように両方肯定するような発言に留めておいた。

実際のところ、今の髪型のクロに見慣れているので他の想像ができない。

 

そんな私の返答に不服そうに、

「君は、どっちが良い?」

と君、の部分を主張してきた。

 

あんなに自分のことは自分で、主義のクロが私の意見を取り入れようとしている状況に驚いた。

好きな方にしたら、と言っても聞かない。

私の好きな方にしたい、と決断を促してくる。

 

私の意見を重要視したいなんて。

満更でもないな。

 

ふふ、と思わずにやけた顔になった。

 

 

 

 

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タコス

 

今日はタコスを作ると決め込んで、買い物をした。

 

 

一度友達の家で振るまってもらってレシピも教わったのだ。

めんどくさがりの私流にかなり工程を簡素化して、スペインに来てから二、三回作っている。

 

タコミートの元になるサルサはスーパーで簡単に手に入る。

ひき肉とそれを和えて、泣きながらみじん切りにした玉ねぎを加える。

ワカモレに玉ねぎを加える方法もあるが、辛い玉ねぎに火を通したかったので今回はお肉と炒めることにした。

ワカモレもアボカドを潰すのがめんどくさいので、ざっくり切ってレモン汁を垂らすだけにする。

後は土台となるトルティーヤにサッと火を通せば完了。

材料費も高くな苦、お手軽にパーティー気分が味わえるのでおすすめだ。

ちなみに、私はパクチー大好き人間なのでパクチーは欠かせない。

 

鼻歌混じりに私がタコスを用意していると、物欲しそうな顔をしてクロが手元を覗き込んでいる。

「食べたいなら、クロの分も作るけど。」

と言うと、子犬のように瞳を輝かせた。

 

具材を食卓に並べて、各自お好みでタコスを作る形式にした。

クロは溢れんばかりの具材をせっせと盛っている。

 

案の定、一口噛むたびにもう片方からぼろぼろと中身がこぼれ落ちた。

ほれ、言わんこっちゃない。

 

「食べにくいから、タコス嫌い。」

などとほざいているが、それはあんたの裁量に問題があるだろう。

 

今日も今日とて率先して洗い物を担当してくれるクロは、せっせと食器を洗ってくれている。

 

「俺はお腹が弱いからタコスみたいな辛いものは進んで食べないけれど、君の作るものは何でも美味しいね。」

不意打ちにそう言われ、単純な私はすぐに上機嫌になってしまう。

 

不思議なものだ。

かつては、料理が下手だといじられることが多かった。

実際、自分でもうまく作れない自分に嘆いたこともある。

だからこそ、たとえお世辞だったとしても、こうして料理の腕を褒められる今の状況に慣れなかった。

 

けれど、考えてみれば当然かもしれない。

確かに昔はうまくできないことが多かった。

それでも、月日が経ち場数を踏むことで多少技術が磨かれることは何も不自然じゃない。

 

私は、周りに言われた言葉で自分自身を評価して、そう言う人間だと思い込んでいたのかもしれない。

そう思ったと同時に、ハッとした。

 

これはきっと料理以外にも言えることだ。

周りが放つ言葉にどんな意図が含まれているのか、嘘か真か、そんなことは受け手側には知るよしもない。

それでも、その言葉をそのまま鵜呑みにするのかどうかは受け手次第なのだ。

 

要は、自分が思いたいように思えばいい。

極端な話だけれど、世間からどれだけ罵られようと、自分は最高な人間だと信じてやまなければ、きっとその人は幸せだろう。

 

私は、周りの評価に影響を受けやすいのかもしれない。

良いことも悪いことも、スポンジのように吸収して一喜一憂する。

それが、たまにしんどくなる。

なぜなら、全てを周りに委ねているからだ。

自分の評価は自分で決めれば良い。

 

なるほどなあ、と勝手に腑に落ちた。

 

私はスペインに暮らすこの短くも長い期間で、愛をものにしたい。

まずは、自分を愛することから。

ありのままを受け入れることを、少しずつ練習しているのだ。

 

誰かに言われて嬉しかったことは素直に受けれて、良い思いをしなければ受け取らないという選択もできる。

それに気づいただけでも、少しは進歩できたのだ。

 

 

 

 

「」=スペイン語

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