大阪人がスペインで愛を得る旅

ワーキングホリデービザでスペインの南の方に住んでいます。

回想

 

 

ここ最近は、どうしても寝る前にクロとのことばかり考えてしまう。

 

 

言い過ぎたかな、とか。

どう考えてるのかな、とか。

 

そして、最終的に負担をかけたくない、という結論に落ち着いた。

 

昨日話をした時、クロは本当に疲れきった顔をしていた。

私との会話に疲れたのもあるのだろうが、学校や自分の事情など、彼の頭を悩ませるものが言葉通り山ほどあるのだろう。

それらを私がどうにかしてあげることはできない。

それに、クロもそれを望まないと思う。

 

自分の考えを分かってもらいたいがために、責め立てるように言葉をぶつけてしまったことを反省していた。

 

彼の頭の中が本当にいっぱいいっぱいなのだとしたら、今はどんな言葉もきっと冷静に受け止められない。

かえって跳ね返したくなるだろう。

 

 

私は思ったよりも落ち着いてきて、クロと毎日顔を合わせることもそこまで辛くない。

クロも気を遣わないように振る舞ってくれているのだろう。

前のようなくだらない冗談を言い合えるような空気感が戻ってきていた。

 

一方で、この状況に慣れてしまうことを恐れる自分ももちろんいた。

本当にこのまま、まるで何もなかったようにクロとはただの同居人になってしまうのだろうか。

 

けれども、楽観的な自分に根拠のない自信で励まされ、とにかく今を楽しく過ごすことを最優先に考えることにした。

 

 

最近のクロは少しずつ、日本語の語彙力を増やしている。

学んだ言葉は、身につけるために何度も口に出して繰り返しているので、覚えも早い。

 

ほとんどがアニメの影響なので独特な口調ではあるが。

本人がお気に召しているようなので問題はない。

 

 

昼食の用意をしている時だった。

動作に雑なところのあるクロは、大きな物音を立てることも多い。

あえてそうしている感も否めないので基本的には放っておくようにしている。

しかし、その日は冷蔵庫をあさる時に私の食材を落とした。

 

食材に大きな損傷はなかったが、謝るそぶりがない。

露骨に視線を送っても反応がない。

 

「人のモノ落としたらちゃんと謝らなー」

とこぼしてみたが、日本語だったので通じたのかは分からない。

 

 

その後出来上がったご飯を持ってリビングに移動すると、

「大阪人は厳しいだけど〜まあ〜いいか。」

と繰り返している。

 

大阪人、のところには私の名前が当てはまると考えてほしい。

ふむ。

私のことを厳しいと感じているのか。

間違ってはいない。

口うるさい方であることは自負している。

 

もしかすると、これまでの言動も厳しいと感じられていたのだろうか。

ふと、そんなことがよぎった。

 

責め立てるように相手に言葉を浴びせる行為は、厳しい以外の何者でもないだろう。

これまでも、クロが私に対して厳しいなと感じた瞬間はきっとあったのだろう。

そこまで深い意味を持って彼が発言したのかは分からないが、私を顧させるには十分だった。

 

自分の治したい部分ではあるが、答えを急かしてしまうところがあると思う。

結論を急かしてもどうにもならない事の方が人生には多いはずだ。

生き急いで厳しいと判定されるよりも、曖昧な結果も受け止める懐の広さを持ちたい。

もう少し余裕を持って人に接しよう。

そう思い改めた。

 

例えば、何か失敗をしたとしてもクロが私を責めることはない。

きっと笑って見せるだろう。

落ち込んでいても、笑い事に変えてくれる。

そんな優しさを、彼から少しずつ学んでいきたい。

 

 

 

 

「」=スペイン語

「」=日本語

で会話をしています。