クロは出不精だ。 自他ともに認めるインドア人間である。 好きなものは家で一人でできるものがほとんど。 例えばアニメを見たり、アニメを見たり。 おかげで今日もまた彼のおすすめのアニメを夜中に見せられているわけだが。 特段嫌な気もせず、これはこれで…
お互いの気持ちが分かってから、クロは二人きりの時にとことん甘えてくるようになった。 時には、もう一人の同居人がいない隙を狙ってこっそりちょっかいを出してきたりもする。 ある時は、私がソファに腰掛けているときに、足元が見えないのを良いことに靴…
コンプレックスなんてものは、誰にでもあると思う。 私にもいくつかあるが、その一つが唇だ。 元々全身どこをとっても血色が良い方ではなく、唇も綺麗な血色ピンクとはほど遠い。 血色の良い唇に憧れて口紅を多重に塗り込んでは、色素沈着するという悪循環。…
私の部屋で二人きり、ベッドに腰掛けて何げない会話をしていた。 以前クロが自分で公言していた通り、彼はcariñosoだ。 いわゆる甘えん坊、でも甘えるだけでなく甘やかすのも好きなのだ。 二人になると途端にスイッチが入って、彼は子犬のようになる。 いや…
次の日、なんとなく恥ずかしくてクロの顔を見れない私。 もう一人の同居人が出かけて二人きりになっても、なんだかぎこちない。 昨日で、私たちの距離がどこまで縮まったのか、測りかねていた。 クロが買い物から帰ってきて、 「君が喜びそうなものを買って…
よし。 自分の気持ちに正直になろう。 気持ちは固まった。 この次に何が起こるかなんて分からないけれど。 言わなければきっと、後悔する。 これから毎日自分の気持ちを隠して彼と一緒に暮らすことはおそらく不可能だ。 それなのに、いざ彼を見つめて言葉を…
誘惑の仕方を教えてもらったところで、不安要素が残っていた。 「誘惑したはいいけど、相手に効かなかったらどうすればいいん。」 教わったのはどれも好意が相手にモロばれしそうなものばかりだ。 一世一代の覚悟で誘惑に踏み切ったものの、相手に引かれてし…
二人でソファに座り、一緒に動画を見せていたときだった。 私が左手を下ろし、彼は右手を上げてお互いの手を叩いた。 動画の中の歌い手があまりにも素敵で、思わずハイタッチしただけだ。 でもその後、ほとんど自然に二つの手は繋がれそうになった。 危ない…
ビタミンが必要な時がある、とクロは言った。 「俺は独身主義だけど、たまにビタミンが必要な時があるんだ。」 と言った。 いわゆる人肌恋しい時に、人のぬくもりが欲しくなるという話だ。 そしてその言葉は事実なのだろう。 クロと出会ってしばらく経った今…
同居人二人がスペイン語で会話している時、まだ私には全てが聞き取れないことが多い。 私に聞かせようとする時は簡単な単語を使ったり、ゆっくり話してくれたりと配慮してくれているのだ。 その日も私は別の作業をしていて、彼らの会話に注意を向けていなか…
理想のタイプは? ありふれた質問だけれど、私はいつも答えに詰まってしまう。 私だって、理想のタイプの一つ二つなくはない。 もちろんなくはないけれど、絶対に譲れない!みたいなものは多分ない。 ましてや外見的要素なんて、花屋で花を選ぶようなものだ…
Persona pesada スペインにはそんな表現がある。 Personaは人、pesadaは重い、という意味がある。 現在私はクロの他にもう一人スペイン人の女の子と同居していて、彼女がクロみたいな人をpersona pesadaというんだと教えてくれた。 日本で重い人というと、恋…
クロは私の大阪弁を聞くのが好きらしい。 地元の友人と日本語(つまり地元の方言)で電話していた日に、片耳で聞いていたらしくそう言われた。 もっとも私は地元の友人にも指摘されるくらいには早口なほうなので、話している内容はほとんど彼には分からなか…
前髪がある頃の写真を探していると、懐かしい写真たちが続々出てきて思わず思い出鑑賞タイムに突入。 隣にいた小型犬クロに尻尾が見えたので、携帯を渡して私が横から覗き込むことにした。 下にスクロールすればするほど若くなっていく自分。 8年前、まだ学…
クロの好みは外見的には前髪があるミディアムストレート、中身はお姉さん系ということが分かった。 これは、その続きの会話である。 「俺は、ベータなんだよね」 とクロが言った。 「一般的にはベータじゃなくてアルファの男が求められてるんだけど、俺は少…
なんでそうなったのかは忘れてしまったけれど、同居人は言った。 「前髪がある女の子が好きなんだよね。」 その前にも、可愛らしい声が好きだのなんだの言っていたので 「ロリコン?」 と聞いてみると断固として違うと言われた。 ロリコンという単語は知ってい…
何回目のデートでキスをするのか〜のくだりで、交際のきっかけの話になった。 どうやって二人は付き合うのか。 日本では、どちらかが「付き合ってください」と申し出るのが一般的だろう。 しかし、アメリカやヨーロッパではその習慣がないと聞いたことがある…
私は今、スペインの南に位置するアンダルシアという地方に住んでいる。 この地方の人々は、スペインの中でも早口で、血気盛ん、フレンドリーな傾向があるらしい。 そして、ことアンダルシアの男子に関して言えば、浮気者が多いことも特徴の一つである。 スペ…
妙な展開になった。 元来私は恋愛ドキュメンタリーの類は見ない人種だ。 それがどうして、こんなことになったのか。 人生というのは予想のできないことだらけで、やはり飽きない。 大袈裟な表現をしてしまったが、端的にいうと、 私は今、スペインで、スペイ…